| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S05-7  (Presentation in Symposium)

アグロエコロジーと総合的な農学の教育研究:府中水田と四賀村のフィールドから【B】【O】
Agroecology and education and research of integrated agronomy: Fields of Fuchu City rice paddy and Shika Village【B】【O】

*本林隆(東京農工大院)
*Takashi MOTOBAYASHI(TUAT. FS Center)

東京農工大学には、東京都府中市内の大学キャンパス内に約15haの農場フィールド(畑、果樹園、牛舎、食品加工施設等)、また同市内に3haの水田フィールドがある。これらのフィールドでは農場実習および農学に関わる様々な研究が行われている。農場実習では水稲をはじめ様々な作物の栽培管理、乳牛の飼養管理、農畜産物の加工など農畜産物の生産から加工に至る基礎的な実習を行っている。一方研究面では、アグロエコロジ-との接点を有する基礎的研究から応用研究まで幅広いフィールド研究が活発に行われている。
演者自身は、不耕起栽培やリビングマルチの導入あるいは圃場周囲の生垣など栽培環境の改変が土着天敵の群集の種構成やそれぞれの種の個体数、害虫に対するインパクトなどに与える影響について検討してきた。また、桐谷(1998)が提唱した総合的生物多様性管理(IBM)の構築を目指して、水稲栽培現場に広く普及している育苗箱処理剤の水生生物に対する生態影響評価に取り組んできた。農工大の農場フィールドは、上記の課題に対して実験的なアプローチを試みる場としては多くのメリットを有している。しかし、周囲を住宅地に囲まれた環境では、生息する生物種は限られ、生物多様性に関する実験には限界がある。このため、水田の水生昆虫群集に対する薬剤の生態影響評価に関しては、種感受性分布(SSD)と多様性が高い里山の水田での調査等を組み合わせた方法を模索している。これらの課題とは別に、伝統的な農業、農生態系から、今後の持続可能な食農生態系を考える研究テーマとして、昨年から演者の生家がある長野県松本市四賀地区(旧四賀村)に入り、在来知に関する調査を開始した。
 本講演では、これらの研究内容を紹介しつつ、アグロエコロジーと総合的な農学の教育研究について考えたい。


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