| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S06-3  (Presentation in Symposium)

青色光毒性を用いた人為選抜によるショウジョウバエの共生菌依存的な表現型の変化【O】【S】
Artificial selection on blue light toxicity induces symbiont-dependent phenotypic changes in Drosophila【O】【S】

*髙田悠太, 西塔心路, 大坪和香子, 布施直之, 市之瀬敏晴, 谷本拓, 堀雅敏(東北大学)
*Yukata TAKADA, Kokoro SAITO, Wakako Ohtsubo IKEDA, Naoyuki FUSE, Toshiharu ICHINOSE, Hiromu TANIMOTO, Masatoshi HORI(Tohoku University)

宿主-共生微生物の関係において「認知」はどのように定義できるか?昆虫-微生物の共生は、アブラムシの細胞内共生のような生存に必須であり高度に発達した共生系、ショウジョウバエのように生存に共生菌が必須ではないが、免疫や代謝、転写産物を介して宿主の生理機能に影響を与える依存性の低い共生系までが存在する。これら共生菌は、宿主表現型の進化的潜在性を高める要因のひとつであり、不安定な環境などにおいて進化を駆動する可能性をもつ。本発表では、ショウジョウバエの共生菌に依存した表現型が進化したケーススタディを通して、昆虫の進化および共生関係における「認知」を議論したい。青色光の連続的な照射は昆虫に対して毒性(致死/卵巣の障害など)を発揮する。我々は、ショウジョウバエを青色光毒性によって選抜することで、青色光に対して高い適応性をもつ系統を確立した(以下、選抜系統)。選抜系統雌成虫は1.有菌特異的に体重が重く、脂質含量が高い2.中腸が長く、宿主の脂質代謝に関連するAcetobacter共生菌(腸内細菌叢の99%を占める細菌)の含量が高い、という表現型を示す。また、抗生物質の経口投与によって、体重と脂質含量の減少、青色光の感受性増加がみられ、これらの影響は選抜系統腸内容物の経口投与によって回復できる。よって、選抜系統の表現型と高い適応性は共生菌に依存していると推定した。興味深いことに、両系統どちらも親が青色光毒性を経験すると子供の中腸が伸長すること、選抜系統では中腸伸長応答が増強していることを見出した。こうした中腸の伸長は共生菌の含量増加に寄与し、同時に宿主の脂質含量増加と青色光に対する適応性向上にも寄与すると考えられる。では、選抜系統は青色光環境下において「共生菌から利益を得られる」ことを認知しているのか?本発表では、近年提唱されたBeneficial molecular dialogueという概念に触れつつ、宿主の生理機能を介した共生菌の認知について考察する。


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