| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S06-6  (Presentation in Symposium)

運動解析から探るハトとカラスにおける採食行動のメカニズム【O】【S】
Mechanisms of feeding behavior in pigeons and crows through tracking analysis【O】【S】

*松井大(北海道大学)
*Hiroshi MATSUI(Hokkaido University)

発表者の専門は、生態学ではなく比較心理学・動物心理学であり、たまに比較認知科学者と名乗ることもある。心理学と付いているからには「心」らしきものを扱うことになっているはずなのだが、発表者は、これまで主に鳥類 (ハシブトガラスとハト) を対象に、運動の分析を通じた学習や知覚の研究をおこなってきた。具体的には、鳥のついばみ運動の視覚性制御を軸に、その種間比較、運動学習、運動制御、あるいは社会的相互作用を調べてきた。本発表では、これらの研究から得られた知見として、採食の際の運動の感覚性制御の寄与について紹介する。加えて、技術的な点を足がかりにすれば、異分野間の対話にも入り込みやすいように思われる。そこで、発表者が運動の分析に用いている画像解析は、言ってしまえば誰にでも使える汎用的な道具であるので、その使用例としても紹介したい。さて、発表者の研究のどこが「心理学的」かというと、(学習と知覚が、“いにしえ”より心理学の問題でもあったという単なる歴史的事実もあるが) とどのつまり、普通の意味では観察不可能な「心」は個体の行動を通じてしか、意味のある科学的探究の対象にならないという点にある。とはいえ、その行動の扱い方は、分野間で色々違うような気もする。元はと言えば、比較心理学の祖はGeorge Romanesで、この人はCharlse Darwinの後継者とも目されていた人物であった。その時代から150年近く経ち、どうにも分野間の隔たりは大きくなったようだ (私自身、生態学会は参加自体、初めてである!)。発表者のお話を生態学者の皆様が聞いて、どう感じるのか、率直な議論ができれば幸いに思う。


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