| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S06-7 (Presentation in Symposium)
コウモリは自ら超音波パルスを放射し、周囲からの反響音(エコー)を聴取・分析することにより周囲空間の把握を実現させている。これをエコーロケーションという。このエコーロケーションによりコウモリは、複雑な地形環境や同時に飛翔する他の個体に衝突することのない飛行を実現させ、飛翔昆虫の採餌タスクさえも実現させている。1送信器(口または鼻)、2受信器(両耳)の超音波センシングからは想像しがたいコウモリの音響ナビゲーション能力については、生態学者のみならず工学者からも長年注目を浴びてきた。
特に近年のわれわれの研究では、コウモリは単に音響センシングを行うだけでなく、周囲空間の記憶を蓄積することで、センシングの頻度や飛行経路を最適化させる空間学習ナビゲーションを実現させていることが明らかになってきた。
本報告では、障害物環境下で繰り返し飛行を行うコウモリの空間学習飛行のふるまいについて紹介し、彼らの音響認知と飛翔行動適応の間にある関係性について考察する。また、最近確立させようとしている数理分析・工学実機ツールを活用した構成論的アプローチによるコウモリ研究の概要についても簡単に紹介する。これらを通して、ユニークなセンシングモダリティをメインに採用するコウモリから感じられる認知について議論させていただければと思う。