| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S07-1  (Presentation in Symposium)

行動の異質さと個体間相互作用が相乗的に集団の特性を決める【O】
Behavioral heterogeneity and inter-individual interactions in a group synergistically determine group performance【O】

*浜道凱也(千葉大学)
*Kaiya HAMAMICHI(Chiba Univ.)

動物は、他個体に影響を受けて意思決定を行なう。反対に、個体の行動は所属する集団(社会)に影響を与え、集団全体では複雑な意思決定が創出される。この複雑な意思決定の根幹を成しているのが「同調」である。また、近年、個体間相互作用にもとづく個体や集団の意思決定機構には、多様性が大きな影響をもつことが明らかにされつつある。しかしながら、多様性と同調がどのような機構で個体や集団の意思決定を創出するかは明らかになっていない。そこで本研究では、キハダショウジョウバエ(Drosophila lutescens)を用いて、個体と集団の意思決定ダイナミクスを明らかにするとともに、その生態的効果を検証した。同一個体群由来の複数の単雌系統について、系統ごとに雌成虫24個体からなる集団を用いて行動観察をしたところ、移動速度に系統間の差が認められた。つぎに、2系統を同数ずつ混合した集団を用いて行動観察を行なったところ、すべての組み合わせで移動速度の同調が認められた。また、個体レベルの行動変化に着目した解析を行なったところ、各個体の移動速度は、直近の周囲の個体の移動速度と相関することが明らかになった。このことは、各個体が、近傍個体の移動速度を参照して行動を変化させていることを示している。一方で、混合集団における同調後の移動速度は、必ずしも混合した2つの系統の移動速度の平均とはならず、似た移動速度をもつ系統の混合集団で移動速度の増加が認められた。このことは、個体や集団の意思決定には個体間の行動の「異質性」が重要な働きをすることを示している。そこで最後に、同調行動がもつ生態的効果を検証するため、8の字型のアリーナを用いて二者択一の餌選択を行なわせた。その結果、各集団の個体は他個体に同調した餌選択を行なうことがわかった。これらの結果をもとに、個体と集団の意思決定ダイナミクスにおける多様性と同調の役割について議論する。


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