| 要旨トップ | ESJ71 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S07  3月19日 13:00-16:00 Room B

不均一性の集団生物学:個性や天邪鬼、ゆらぎがもたらす集団機能の創発【O】
Biology of heterogeneous groups: emergence of group performance through individual variation【O】

高橋佑磨(千葉大・院・理), 佐藤大気(千葉大・IAAR)
Yuma TAKAHASHI(Chiba Univ.), Daiki SATO(Chiba Univ.)

生命システムは不均一である。個体は多様な細胞で構成され、個体群は多様な個性をもつ個体で構成され、生態系は多種多様な種で構成される。性質の異なる要素の集合は、要素間の相互作用を通じて、均一な集団では成し得ないような機能を発揮することもある。このような多様性、あるいは不均一性が各階層の生命システムの機能や特性を創発的に形作るプロセスを理解することは、生命科学の醍醐味の一つである。
 生物の集団や群れは、さまざまな要因に起因する多様性を内包する。遺伝的な変異により生じる多様性がある一方で、単に発生のゆらぎ(発生ノイズ)によって生み出される多様性もある。また、環境の時空間的異質性によって生じる多様性や、他個体とは異なった選択(天邪鬼的な意思決定)をすること、社会的な分業などによっても集団内に多様性が生まれる。
 本シンポジウムでは、多様な要素(個体や細胞)で構成されたマルチエージェント集団において要素間相互作用や個体の意思決定の定量・推定方法や、要素間の異質性が集団全体の特性に与える創発的影響について最新の研究トピックを紹介する。不均一性に由来する集団レベルでの創発特性のゲノム基盤にも触れる。細胞集団や動物の群れなどさまざまな階層の集団において多様性が集団の動態やパフォーマンスに与える影響を議論するとともに、そのような創発特性の応用可能性を議論したい。

[S07-1]
行動の異質さと個体間相互作用が相乗的に集団の特性を決める *浜道凱也(千葉大学)
Behavioral heterogeneity and inter-individual interactions in a group synergistically determine group performance *Kaiya HAMAMICHI(Chiba Univ.)

[S07-2]
新生神経細胞のチェーン移動の数理モデリング:異質な集団は速いか? *脇田大輝(東北大・通研)
Mathematical modeling of neuroblast chain migration: is a heterogeneous swarm fast? *Daiki WAKITA(Tohoku Univ.)

[S07-3]
個体間相互作用が生み出す集団内異質性とその進化的帰結:社会性昆虫での事例 *土畑重人(東京大・院・総合文化)
Causes and evolutionary consequences of within-group heterogeneity: a case study in social insects *Shigeto DOBATA(Univ. Tokyo)

[S07-4]
集団行動のセマンティクス理解のための逆強化学習~自律分散システム設計への活用~ *荒井幸代(千葉大・工)
Inverse reinforcement learning for understanding the semantics of collective action ~Toward the design of autonomous decentralized systems~ *Sachiyo ARAI(Chiba Univ.)

[S07-5]
ショウジョウバエの集団心理を制御するゲノム変異とその多様性 *佐藤大気(千葉大・IAAR)
Genomic variation and diversity underlying the "safety in numbers" of flies *Daiki SATO(Chiba Univ.)


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