| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S08-5  (Presentation in Symposium)

アジア熱帯における中型果実食者の半着生イチジクの種子散布への貢献【O】
Contribution of medium-sized frugivores to the seed dispersal of hemi-epiphytic figs in tropical Asia【O】

*中林雅(広島大学)
*Miyabi NAKABAYASHI(Hiroshima Univ.)

 本研究の目的は、ボルネオ島の中型果実食者の半着生イチジクの種子散布への有効性を評価することです。

 半着生イチジクは、東南アジア熱帯の群落内のイチジク属の3分の1から半分以上を占めます。また、1回の結実量の多さと結実に季節性がないことから、多くの動物にとって主要な食資源として利用されています。こうした生態学的な重要性にも関わらず、半着生イチジクの種子散布システムはほとんど研究されていません。
 半着生イチジクの種子は宿主の木の樹冠で発芽するので、有効な種子散布者は樹上性か飛翔性の動物に限定されます。さらに、樹冠内でも安定した水分供給が得られる微環境に種子が散布される必要があります。つまり、種子散布動物の排泄場所が半着生イチジクの運命を左右します。
 本研究では、食物の半分以上をイチジクに依存する3種の中型果実食者(ミュラーテナガザル、ビントロング、オナガサイチョウ)で、種子散布の量的・質的な有効性を比較しました。
 量的有効性は、一本の結実木で何個の種子を体内に取り込んだかを評価しました。その結果、ビントロングが他の2種と比較して、圧倒的に多くの種子を取り込みました。質的有効性は、散布微環境を評価しました。3種とも樹上で排泄しましたが、ビントロングは糞を特定の環境にこすりつける習性を持ち、その散布微環境はもっとも発芽に適していました。したがって、3種の中ではビントロングが半着生イチジクのもっとも有効な種子散布者だと分かりました。
 東南アジア熱帯では、テナガザルとサイチョウは重要な種子散布者と位置づけられていますが、本研究は、半着生イチジクの種子散布に関しては、この2種の貢献度は高くないことを明らかにしました。樹高が高く複雑な階層構造をもつボルネオ島の森林では、ビントロングのように発芽に適した環境に確実に種子を運ぶ動物は、半着生イチジクにとって極めて重要な種子散布者だと考えられます。


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