| 要旨トップ | ESJ71 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S08 3月19日 13:00-16:00 Room C
着生植物は,樹木など他の植物個体上で非寄生的に生育する植物である。自然度の高い湿潤な森林の林冠部には,地上では見られない多様な着生植物種が生い茂る群集が成立する。このような着生植物群集は“空中庭園”とも呼ばれ,大航海時代から現在に至るまで,森林に接する人々の興味の対象となってきた。
1980年代以降,林冠部へのアクセス技術の飛躍的な進歩により,それまでほとんど明らかにされていなかった林冠部の生態系は活発な研究の場となった。これにより着生植物の多様性が陸上の全維管束植物種数の約10%に達するほど高いことや,着生植物群集が森林の物質循環に大きく関与すること,他の動植物にハビタットを提供することなど,着生植物群集が森林生態系における多様性・機能の両面で重要な役割を担うことが解明された。このため,着生植物群集とその成立規定要因を明らかにすることは,森林生態系の理解の深化に大きく貢献できると考えられる。では,着生植物群集は,樹上というユニークなハビタットにおいてどのように成立しているのだろうか?
これまで着生植物群集の成立規定要因の解明に係る研究は,主に米大陸の熱帯林で行われきた。一方でアジアでの研究も徐々に進展しており,日本人研究者による貢献も大きい。それでは,アジアにおける着生植物研究はこれまでにどこまで進展し,どのような発展性を秘めているのだろうか?
本シンポジウムでは,アジアで行われてきた着生植物群集とその成立規定要因の解明に迫る研究を,宿主木,気候環境,共生菌類,種子散布者との関係など,多様な切り口から紹介する。総合談義では,今後のアジアでの着生植物研究の発展性について,講演者・コメンテーター・ご聴講の皆さまで談義したい。本シンポジウムが,アジアにおける着生植物研究のさらなる発展に向けた起爆剤となれば幸いである。
コメンテーター:神崎 護(京都大学)
後援:植生学会
[S08-1]
ボルネオ島低地熱帯林における着生植物群集の宿主木種およびマイクロハビタットの特性
Characteristics of host species and microhabitats of epiphyte assemblages in a Bornean lowland tropical forest
[S08-2]
巨樹上の着生植物の成立要因と生態学的役割
Canopy environments supporting epiphytes on large, old trees and their ecological roles
[S08-3]
林分スケールにおける維管束着生植物の分布は,地形勾配の影響を受けるか?
Is the distribution of vascular epiphytes at the finer spatial scale affected by topographic gradients?
[S08-4]
ランはなぜ木に登ったか?ラン科の生活形進化に及ぼした菌類のインパクト
How did orchids manage to climb trees? Impacts of fungi on the evolution of evolution of life forms in the Orchidaceae
[S08-5]
アジア熱帯における中型果実食者の半着生イチジクの種子散布への貢献
Contribution of medium-sized frugivores to the seed dispersal of hemi-epiphytic figs in tropical Asia