| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S10-2 (Presentation in Symposium)
タケササ類は、一回繁殖性で広域同調開花性を示す植物であり、これまで開花周期が長い理由について、捕食者の飽和などの観点から仮説が提唱されてきたが、結実率に種子散布前の昆虫の種子食害が及ぼす影響についてはあまり注目されてこなかった。まず、12種のタケササ類の花を観察し、2種のササノミモグリバエとタマバエ科の数種の幼虫が主な食害者であることが分かった。次に、近年120年ぶりの一斉開花として注目されたハチクとスズタケの全国の開花地において、複数年にわたって結実率や食害率を調べ、開花規模や開花年との関係を解析し、広域同調開花性が昆虫による食害を逃れる上で有利であることが明らかになった。さらに、大規模な開花地では小規模な開花地と比べて、2年目以降に花食者のみならず花食者に寄生する寄生蜂も増加し、花食者の増加が抑えられることで咲き遅れ年に種子を残すことができる可能性が示された。
一斉開花植物の花・種子を食べる昆虫の一斉開花期間外の寄主植物利用についてはほとんど解明されておらず、ササノミモグリバエのタケササ類の一斉開花期間外の生活史は不明である。そこで、タケササ類では3種の花・新芽・筍を、ササ開花地近辺で開花していた6種のイネ科草本をそれぞれ提供する実験を行い、ササノミモグリバエは一斉開花期間外にタケササ類の筍を主に利用しているものの、イネ科の複数の分類群も広く寄主として利用している可能性が認められた。本発表では、植物側と昆虫側の両方の視点からタケササ類と花食者の生態について議論する。