| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S11-1 (Presentation in Symposium)
人間の文化・生活様式は空間的な不均一性を持ちながら時代によって大きく変化してきた。文化は人口動態や資源利用と密接な関係を有することから、その歴史は生物マクロパターンの重要な駆動因である可能性が高い。本講演では、人間文化が生物・生態系にもたらすインパクトに着目した2つの研究、「考古学的な時間スケールにおける産業の歴史と現在の哺乳類の分布パターンに関する研究(Fukasawa and Akasaka 2019 Sci Rep)」、および「現代における中山間地の廃村化がチョウ類に与えた影響に関する研究 (Sugimoto et al. 2022 Proc B)」、を紹介する。考古学的な時間スケールにおいては、製鉄や製陶の遺跡分布が時代とともに特定産地に集約化していく傾向が確認され、現代の哺乳類の種分布がそれらの要因でよく説明できることが明らかになった。また、現代の産業構造の変化や少子高齢化に伴う集落の廃村化は、寒冷地性のチョウに偏った負の影響をもたらしていた。このような廃村化に伴う偏った種のレスポンスは、完新世における人間活動が最終氷期以降の温暖化の影響を緩和してきた歴史を反映していると考えられる。生物・生態系の状態や機能の背後にある人間文化の関与を明らかにすることは、人間と生態系の関係の理解にさらなる深みをもたらすと考えられる。