| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S11-3  (Presentation in Symposium)

人類進化から考える人間文化と生物の関係性【B】【O】【S】
Relationships between human culture and non-human species from the perspective of human evolution【B】【O】【S】

*松前ひろみ(東海大学)
*Hiromi MATSUMAE(Tokai University)

ヒトと文化の進化的関係は大きな研究テーマの1つであるが、文化と生態系はそれを上回る壮大なテーマである。そこで本講演では、発表者がこれまで人類の進化ゲノミクスと文化の定量解析に携わってきた知見を中心に、文化データやその解析事例を紹介する。理論が先行する研究テーマもあるが、ゲノムや生物多様性情報に加え、文化も含めたデータベースの活用による実証研究も増えている。また一口に文化に関する研究といっても、進化や時間に着目するのか、空間や相互作用に着目するのかなど、アプローチはさまざまである。例えば自然人類学や進化生物学では、集団遺伝学を用いた生物学的進化と言語など文化の進化を比較する研究が1980年代から行われてきた(Cavalli-sforza, et al, 1988)。しかし文化のデータベース化や文化進化の年代推定法などは依然として発展途上である(松前ら, 2022)。そこでヒト集団のDNA情報から得られる年代情報を、文化進化に対しある種の帰無仮説として与えて、文化とDNAの進化を比較する方法が用いられることがある(Matsumae et al, 2021)。このように文化では時間に関する情報の扱いが生物よりも難しい。一方、現在の生物多様性の観点から、ヒトの植物利用について文化多様性と生物多様性を探索する研究も報告されている(Pironon, Ondo et al, 2024)。この研究のように現在の空間情報や相互作用を対象とした手法は、文化研究との相性がよい可能性がある。研究目的に適した文化データの調理法を生態学の専門家と議論したい。


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