| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S15-5  (Presentation in Symposium)

絶滅危惧チョウ類2種の生息域外保全集団における繁殖途絶及び減少プロセス【O】
Reproductive disruption and decline processes in ex-situ conservation populations of two endangered butterfly species【O】

*中濱直之(兵庫県立大), 小長谷達郎(奈良教育大), 佐藤光彦(かずさDNA研), 上田昇平(大阪公大), 平井規央(大阪公大), 矢後勝也(東京大), 矢井田友暉(神戸大), 丑丸敦史(神戸大), 鈴木結子(京都大), 井鷺裕司(京都大)
*Naoyuki NAKAHAMA(Univ. Hyoto), Tatsuro KONAGAYA(Nara Univ. Edu.), Mitsuhiko P SATO(Kazusa DNA Res. Inst.), Shouhei UEDA(Osaka Metro. Univ.), Norio HIRAI(Osaka Metro. Univ.), Masaya YAGO(Univ. Tokyo), Yuki YAIDA(Kobe Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.), Yuiko SUZUKI(Kyoto Univ.), Yuji ISAGI(Kyoto Univ.)

 昆虫類は現時点で60種が国内希少野生動植物種に選定され、そのうち保護増殖事業対象種は12種となっている。そのうち、オガサワラシジミ (シジミチョウ科) は近年小笠原諸島母島でのみ生息が確認されていたが、2018年を最後に野生個体の発生は確認されていない。2016年から継続的な生息域外保全が実施されたが、2020年には20世代目の飼育個体がすべて繁殖途絶してしまった。ウスイロヒョウモンモドキ (タテハチョウ科) は中国地方を中心に分布していたが、現在確実な野生の生息地は1-2か所程度しかなく、昆虫館などで生息域外保全が実施されている。本研究では、オガサワラシジミ及びウスイロヒョウモンモドキについて、MIG-seqによるゲノム縮約解析による遺伝的多様性の評価をおこなった。
オガサワラシジミは、生息域外保全集団の世代が経過するにつれ遺伝的多様性が低下し、それに伴い有核精子数及び孵化率が顕著に低下し、生息域外保全の末期では孵化率がゼロに近かったことが明らかとなった。このことから、近交弱勢が本種の繁殖途絶の要因の一つであることが推定される。
 ウスイロヒョウモンモドキでは現存する生息域外保全集団及び、絶滅した過去の生息域外保全集団で遺伝的多様性を比較した。兵庫集団の相対的な遺伝的多様性は低かったものの、近交弱勢で繁殖途絶した集団と比較すると高い遺伝的多様性を維持していた。岡山集団は過去16年間で、遺伝的多様性の低下は見られず、高い水準を維持していた。本種の解析のように近交弱勢により繁殖途絶した集団のサンプルと比較することで、近交弱勢の発生リスクについて検証可能と期待される。
 また講演では両種について、全ゲノムリシーケンスによる集団動態の推定なども併せて報告する予定である。


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