| 要旨トップ | ESJ71 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S15 3月20日 9:00-12:00 Room E
生物多様性には多面的な価値が認められている反面、様々な生態系において生物多様性は危機的状況にある。日本では、「種の保存法」が1992年に制定され、生物多様性保全のための施策が行われてきている。現在、種の保存法に基づいて64種の絶滅危惧種が保護増殖事業の対象種となっており、手厚い保全策がとられている。これらの種は、我が国の希少種の保全を通した生物多様性保全に関して最重要分類群といえるが、これまでのところ、十分に増殖して指定が解除された種はない。また、2020年、指定種の中でオガサワラシジミの生息域外保全集団が消滅し、また、野生生息個体も確認されないような状況となり、絶滅危惧種の保護増殖の困難さが浮き彫りになった。
このような重要な生物保全活動に近年発展が著しい全ゲノム解読技術をどのように活用できるだろうか。本シンポジウムでは、空間的遺伝構造、保全ユニット、血縁度など、従来の保全遺伝学的アプローチで解明、活用されてきた調査項目を超えたゲノムレベルの解析ならではでの情報を活用することで、保護増殖事業対象種が辿ってきた歴史をたどり、ゲノム構造や適応的遺伝子座の状態から種の本質的な脆弱性を推定し、また、現存する野生集団と生息域外保全集団のゲノムの状態をもとに、個体群の存続性について将来予測をする研究アプローチを紹介、議論する。
紹介する保護増殖事業対象種はイタセンパラ、アユモドキ、ムニンノボタン、アカガシラカラスバト、イヌワシ、オガサワラシジミなどである。
コメンテーター: 三品達平(九州大院・農)、奥山雄大(筑波実験植物園)、矢後勝也(東大総合研究博物館)
[S15-1]
保護増殖事業対象種の状況をゲノム情報でどのように理解するか
How to understand species targeted for conservation and propagation programs through genomic information
[S15-2]
絶滅危惧淡水魚類の危機診断:ゲノム景観から予測される小集団化の影響とその種間比較
Risk assessment for threatened freshwater fishes: interspecific comparison of the effects of population decline predicted from the genomic landscape
[S15-3]
開放水域で希少魚の成魚個体数を調べる試み − 海産大型魚アカメへのCKMR法の適用
Estimating adult census size of rare fish species in open waters - An application of CKMR method in a large marine fish, Lates japonicus.
[S15-4]
小笠原固有種ムニンノボタンとその近縁種の系統解析とゲノム脆弱性の評価
Phylogeny and genomic vulnerability of the Ogasawara endemic species Melastoma tetramerun and its closely related species.
[S15-5]
絶滅危惧チョウ類2種の生息域外保全集団における繁殖途絶及び減少プロセス
Reproductive disruption and decline processes in ex-situ conservation populations of two endangered butterfly species
[S15-6]
ニホンイヌワシにおける主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子の多様性と繁殖への影響
Major histocompatibility complex (MHC) gene diversity and its effects on reproduction in the Japanese golden eagle
[S15-7]
小笠原固有の絶滅危惧種アカガシラカラスバトの個体数増加を可能にしたゲノムの特徴
Genomic background enabling population recovery of the endangered red-headed wood pigeon endemic to the Ogasawara Islands