| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S16-3  (Presentation in Symposium)

生態系のつながりが創出・維持するサケ科魚類の生活史多様性【B】【O】
Ecosystem linkage contributes to generating and maintaining life-history variation in a salmonid fish population【B】【O】

*上田るい(京都大・生態研), 金岩稔(三重大・生物資源), 照井慧(UNC Greensboro), 瀧本岳(東京大学), 佐藤拓哉(京都大・生態研)
*Rui UEDA(Kyoto Univ.), Minoru KANAIWA(Mie Univ.), Akira TERUI(UNC Greensboro), Gaku TAKIMOTO(Univ. of Tokyo), Takuya SATO(Kyoto Univ.)

自然界では様々な生態系が隣接しあっているが,その境界域で季節的に生じる系外資源は,受け手となる消費者個体群の生活史を変化させ得る.一方で,これまでランダムな差異と見なされてきた生活史の個体間変異は,生活史戦略である可能性がある.その場合,生態系間の相互作用が生活史の個体間変異に及ぼす影響を明らかにすることは,変動環境に対する個体の適応可能性だけでなく,ひいては個体群動態や群集構造などへの波及効果を予測可能にするかもしれない.

そこで本発表では,サケ科魚類アマゴの単一個体群を対象として,森林から河川に流入する系外資源の量と季節性を操作する大規模野外操作実験,全個体の個体識別を目指した2年間にわたる標識再捕調査,および,そこから得られる個体差を明示的に扱う統計モデルを組み合わせることで,系外資源の季節性と生活史の個体間変異との関連性を調べた.

実験より,アマゴの季節的な成長期間の初期にあたる春から夏に実験的に系外資源を供給すると(春-夏供給区),高成長をとる個体の割合が高くなった.一方,夏から秋に系外資源を供給した場合(夏-秋供給区)や,系外資源供給がない場合(対照区)には,中間的な成長を示す個体が優占していた.また,高成長な個体ほど早熟であった.成熟開始年齢における個体間変異を比較すると,春-夏供給区では,他の実験処理区と異なり,1歳成熟個体と2歳以降成熟個体の割合がおおよそ均等になった.これは,一般的な成長-生残のトレードオフ関係が見られず,高成長かつ早熟な個体の増加が繁殖期まで維持されたためだと考えられた.

本研究から,生態系のつながりの季節性が,アマゴ個体群における生活史の個体間変異を規定することが実証された.これは,生活史の個体間変異とその個体群・群集への波及効果を理解する際に,景観スケールで生じる生態系間相互作用の季節性を考慮することの重要性を強調している.


日本生態学会