| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S19-2  (Presentation in Symposium)

植物の倍数体ゲノム解析の沼【O】
The Abyss of Polyploid Plant Genome Analysis【O】

*磯部祥子, 白澤健太, 佐藤光彦, 田島直幸, 平川英樹(かずさDNA研究所)
*Sachiko ISOBE, Kenta SHIRASAWA, Mitsuhiko SATO, Naoyuki TAJIMA, Hideki HIRAKAWA(Kazusa DNA Research Institute)

植物界には高次倍数性のゲノム構造を有する種が多く存在している。高次倍数体は全ゲノム配列が重複しているために染色体レベルでの配列の識別が難しく、解析が困難であるとされてきた。しかし、近年のNGS技術の発展により、異なる染色体セットが同じ細胞内に存在する異質倍数体の解析は比較的容易になってきた。一方、同一の染色体セットが多重に存在する同質倍数体は染色体の識別が異質倍数体よりも困難で未だ染色体毎のゲノム解析が難しい。
PacBio・Hifiリードなどの利用により、全ゲノム解読では2倍体であってもハプロイド毎にゲノム配列をアセンブルするHaploid-resolved assemblyが全ゲノム解読の手法の主流になりつつある。この手法を用いれば異質倍数体の場合はサブゲノムの識別とさらにサブゲノムを構成する2つのハプロイドを識別したアセンブルを実施することができる。Hifiリードを用いたゲノムアセンブリでは通常ゲノムサイズの約20~30倍の重複度の配列を取得すればある程度の品質のアセンブル配列を得ることができる。しかし、高次倍数体においてより正確なアセンブル配列を得るには倍数性の程度にもよるが、ゲノムサイズの100倍程度の重複度の配列を重複することが一層望ましい。一方、同質倍数体においてはHifiリードのみでは染色体毎のアセンブルを得ることが難しい。この場合は連鎖地図を利用して地図上にcontigsを整列化させることが有効な手段の1つである。本シンポジウムでは我々がこれまで全ゲノム解読をおこなってきた異質八倍体のイチゴと同質六倍体のサツマイモを例に高次倍数体の全ゲノム解読の現状について紹介する。


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