| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S20-1 (Presentation in Symposium)
急速な減少によって「第二の危機」として警鐘が鳴らされている二次的自然の中でも,草原は国内外で特に急速に消失している。日本の草原は、大部分が人為管理に依存する半自然草原であるが,放牧地・採草地としての従来の経済的価値が急減したことで維持管理が難しくなり,放棄されることで森林化してきた。一方で,黒ボク土に代表される火山灰土壌は,日本の国土面積の約30%を占める主要土壌のひとつである。また,黒ボク土は世界の主要土壌12種類の中で,もっとも炭素蓄積量のバリエーションが大きい土壌型である。その中で炭素蓄積量が多い黒ボク土は,必ず草原であった,もしくは,現在でも半自然草原であるという履歴をもつ。これまで,この炭素のシンクとしての機能が期待されている黒ボク土の炭素蓄積量は,粗大有機物(植物根および地下茎)を除いた土壌試料(≦2 mm)を用いて評価されてきた。しかしながら,土壌中に蓄積されている炭素の起源は粗大有機物である。そこで,継続期間が100年以上の草原(古草原)と古草原に植林を行った人工林(森林),森林を開墾し草地化した草原(新草原)において,従来からの評価方法に準じた炭素蓄積量と粗大有機物を含めた炭素蓄積量を評価した.その結果,古草原が最も炭素蓄積量が多く,且つ,根量が多いことが示され、森林化すると土壌炭素蓄積量と根量が減り、再草原化しても数十年程度の時間では古草原の土壌炭素蓄積量と同程度には回復しなかった。