| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
シンポジウム S20-3 (Presentation in Symposium)
草原は主要な陸上生態系の1つであり、完新世の間に火入れ・放牧・草刈りなどの人為的な管理によって増加してきた。特に、人に管理される草原であっても歴史の古い草原は生物多様性が豊かであること、草原継続期間により動植物の種数が変化することが報告されており、種数の変化は形質組成に影響を及ぼしうる。種の形質は種間相互作用を決定づける要素であり、形質組成は生態系機能を評価する上で、種数よりも直接的な指標となりうる。送粉群集では、花―送粉者の種間相互作用の決定や植物の繁殖成功には、種数よりも形質組成が重要であることが指摘されている。一方で、草原継続期間の増加に伴った花・送粉者の形質組成や種間相互作用、繁殖成功(送粉機能)の変化は定量的に研究されていない。
本研究では、草原の継続期間とともに(1)花と送粉者の形質組成が多様になる、(2)植物の繁殖成功が群集全体で高くなる、という仮説を検証した。
本研究は長野県上田市の菅平高原の複数スキー場において調査を行なった。全てのスキー場は元々放牧地であったが、森林化を経て1930年以降に造成されたスキー場(新草原)10地点と放牧地がそのまま利用されたスキー場(古草原)5地点で訪花観察を行なった。花形質は花筒長・花色を、送粉者形質は口吻長を計測した。また、送粉者を5つの機能群(ハナバチ・ハナアブ・その他ハエ類・チョウ類・その他)に分類して解析に使用した。送粉機能調査として、計15植物種で同種・異種の柱頭付着花粉数を測った
結果から花・送粉者ともに形質組成が草原継続期間で変化することが確認されており、発表では、こうした花形質・送粉者形質組成・繁殖成功が、花-送粉者の関係を通じてどのように変化しているのか議論する。