| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


シンポジウム S20-4  (Presentation in Symposium)

歴史が古い草原ほど審美的価値は高いのか? ー花形質に対する人々の選好性ー【B】【O】
Do older grasslands have higher aesthetic value? People's preferences for floral traits【B】【O】

*冨髙まほろ(筑波大学・山岳セ), 佐々木雄大(横浜国立大学), 田中健太(筑波大学・山岳セ)
*Mahoro TOMITAKA(MSC, Univ. Tsukuba), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.), Tanaka KENTA(MSC, Univ. Tsukuba)

森林が成立する気候帯の地域にも自然攪乱・人為撹乱の作用によって数百~数千年にわたって継続している歴史の古い草原が世界的に分布しており、特に保全優先度が高い生態系の一つとして注目されている。中でも、放牧や茅採集など人々の利用によって成り立っていた半自然草原は管理放棄によって急速に失われており、残された草原では主な管理目的が観光・景観維持・生物保全などへと変化している。そのため、草原の審美的価値を把握することは今後の草原利用を促進する上で重要である。歴史の古い草原は、花と送粉昆虫との複雑な相互作用が形成されていることが指摘され始めている。一方で、花がもつ人々にとっての審美的価値や、草原継続期間による種構成変化がもたらす審美的価値への影響は分かっていない。
本研究は、(1)人々はどのような形質の花を好むか、(2)歴史の古い草原の花は美しいか、(3)歴史の古い草原景観は審美的価値が高いか、の3つの問いを検証した。
長野県の菅平・峰の原に生息する草原性植物161種(虫媒151種・風媒10種)の花写真を用いて全国の10000人にオンラインアンケート調査を行った。相対的な審美的選好度を求めるために、背景を統一した2種の写真を同時に提示し、11段階の対戦方式で好みを質問した。形質データ(石井・丑丸ほか 未発表、色・花筒深・花序タイプ・相称性・開放部の向き)を利用して、どのような形質をもつ花が好まれるかを調べた。次に、300年以上継続している古草原68地点・70年以下の新草原49地点の植生調査(矢井田・井上ほか 未発表)データを利用して種ごとの古草原依存度を求め、古草原に依存する種ほど審美的選好度が高いかを調べた。最後に、古草原6地点・新草原7地点の虫媒花の開花量を5~9月にかけて毎月調査したデータ(平山ほか 未発表)を利用して、各花の審美的選好度と開花量からなる地点あたりの審美的価値が、歴史の古い草原の方が高いか調べた。


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