| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
自由集会 W06-2 (Workshop)
侵略的外来種の数とその被害は世界的に増加の一途をたどっており、その拡散抑制は国際的に重要な課題となっている。そのため、各地で外来種の影響評価が行われてきたが、その評価範囲は限定的で、全球規模における外来種の影響は長らく不明であった。そこでIPBES外来種アセスメントでは、世界各地から様々なタイプの文献を収集し、全球規模での外来種の影響を「種多様性(Nature)」・「自然がもたらすもの(Nature's contributions to people)」・「良質の生活(Good quality of life)」の3つの観点から分析評価を行った。
分析の結果、外来種は60%の種絶滅に何らかの形で関与しており、その多くは外来哺乳類によって引き起こされていることが明らかとなった。経済被害は2019年には年間4230億ドルに達していると推測され、被害額は10年毎に4倍に増えていることも確認された。また報告された85%のケースで人々の生活の質に負の影響をもたらしており、その多くは食料生産に影響していることが確認された。産業別にみると、農業分野での外来昆虫の影響が顕著であり、地域でみると島嶼部、そして温帯や高緯度地帯の森林や農地において深刻な影響が認められた。
一方で、外来種の影響報告には地理的および分類学的な偏りがみられた。中央アジアやアフリカ地域、海域での研究事例は少なく、微生物の影響も過小評価されている可能性が示唆された。またアセスメントに用いられた文献の95%は英語によるものであり、英語以外の言語で報告された情報の多くは本アセスメントには含まれていないことも問題点として挙げられている。しかしながら、本アセスメントの成果は侵略的外来種が与える影響の大きさと幅広さを再認識させるものであり、その脅威抑制の必要性を強く訴えるものとなっている。