| 要旨トップ | ESJ71 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
自由集会 W09 3月19日 16:30-18:00 Room A
エージェントベースモデル(Agent based model)は、個別の属性情報と行動ルールを持つ自立的主体である複数のエージェントが、様々な属性を持った環境中を相互作用しながら移動などの意思決定を行い、その結果生じるエージェントの内的状態や環境の将来予測を行う空間明示モデルである。エージェントモデルは主に社会科学や農業経営学等の分野で利用されてきたが、生態学での応用は限られている。放牧草地生態系は、多様な放牧の空間パターン、植生や降水量変化などダイナミックかつ時空間的に複雑に変動する複合的な変化とそれらの相互作用による動物や環境への影響が考えられるため、これらの影響をシミュレートすることのできる空間明示モデルが必要である。
また、降水量変動の大きい乾燥地では、牧草生産が時間的・空間的に不均質なため、家畜の密度や行動の空間パターンと牧草資源とのミスマッチ、すなわち過放牧が起きやすい。これを回避するため、モンゴル高原では草原を広く薄く利用する遊牧が数千年間維持されてきた。しかし、近年の気候・社会変動下において遊牧が変容し、家畜頭数の増加による過放牧、ひいては家畜栄養状態の悪化が懸念されている。そこで、本集会では家畜をエージェントとし、モンゴル生態系における家畜放牧の空間パターンが家畜のエネルギー収支や草地劣化に及ぼす影響を予測した。
企画者らは、モンゴル高原を対象とし、社会・気候変動下の家畜生産や過放牧の実態を明らかにすることを目的としてプロジェクトを実施している。過放牧を捉える上で重要な要素である、牧草の量と質(栄養価や家畜の嗜好性)、家畜の行動とエネルギー収支、降水量、牧民生計を多様なフィールド調査により調べ、それら要素間の時空間的な関係性について様々なシナリオのもとエージェントモデルシミュレーションを行っている。本集会では、このプロジェクトについて三名の演者が紹介する。
[W09-1]
エージェントモデルを用いてモンゴル放牧生態系の家畜生産性と草地への影響を予測する
Agent-based modeling of livestock predicting sheep energy balance and grassland degradation