| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W10-3  (Workshop)

植物における分散能力の変化: 海洋島進出は分散能力の低下をもたらすか?【O】
Evolutionary dynamics of dispersal ability in plants: Does colonization onto oceanic islands lead to a loss of dispersal ability?【O】

*村上将希, 伊東拓朗, 牧雅之(東北大学)
*Shoki MURAKAMI, Takuro ITO, Masayuki MAKI(Tohoku Univ.)

海洋島に進出した生物の多くは独自の進化を遂げており,植物では種分化過程において,しばしば種子の大型化に伴う分散能力の低下が生じることが知られている.上記の変化は,周囲から隔離された島の独自の環境条件に起因すると考えられ,移入元から離れるにしたがって隔離の作用は大きくなると予想される.しかし,先行研究の多くは,大陸から遠く隔てられた海洋島で検証しているため,地理的・環境的勾配に沿った段階的な分散能力の変動過程はほとんど明らかになっていない.また,分散能力が喪失した種の多くは,移入種とは遺伝的に明瞭に分化した島嶼固有種となっている例が多く,移入元から大きく分化していない広域分布種でも同様に分散能力の低下が生じるのかについては知見が乏しい.
富士火山帯に位置する伊豆諸島と小笠原諸島は,本州近海(伊豆:約25-250km)から遠海(小笠原:約1000-1200km)にわたって直線状に点在し,多様な地理的隔離・環境勾配を有するため,隔離の程度に応じた分散能力の変動を検証するのに適したフィールドであるといえる.そこで本研究では,本州~小笠原諸島に広く分布するアジサイ科ガクアジサイを対象として,①ゲノムワイドな遺伝情報に基づいて海洋島進出過程および集団間分化を推定し,②島ごとに種子サイズの定量を行うことで,「本州からの距離が遠くなるほど分散能力が低下する」という仮説を検証する.
葉緑体全ゲノムおよび核SNPsに基づく集団遺伝解析の結果,島あるいは地域間で遺伝的分化が認められ,ガクアジサイは過去に北から南に分布拡大をしたことが示唆された.また,伊豆諸島集団の種子は定説に反して本州から離れるほど小さくなる傾向が見られた一方で,小笠原諸島集団の種子は伊豆諸島集団よりも大きくなる傾向がみられた.本発表では,上記の結果をもとに,ガクアジサイの海洋島進出に伴う種子サイズ変化のパターンが,伊豆諸島と小笠原諸島で異なる要因について考察する.


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