| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
自由集会 W11-2 (Workshop)
リモートセンシング技術の一つであるLiDAR(Light Detection And Ranging)とは、センサーからレーザー光を発射し、その反射までの時間差を計測することで物体までの距離を測る技術である。広範な分野で多岐にわたる利用がなされているが、森林分野においては、人工林での事例を中心に、樹高の計測や森林構造の把握などに用いられてきた。近年、センサーの廉価化に伴い、森林でのLiDAR技術の利用可能性が高まりつつある。我々も2022・23年の二年間で日本全国の天然林固定試験地23か所でドローン搭載型LiDARによるデータの取得を行い、日本初の天然林における統一的なLiDARデータセットの整備を進めてきた。これまでのデータ解析により、植生区分によって林分構造に大きな変異があることを明らかにしたが、次なるステップとしてLiDAR測量から得られる多大な情報を、従来の樹木観測データとどのように合わせて“調理”するのかという課題に直面している。個体毎の長期観測データとLiDARから得られる情報とを結びつけるためには、LiDARデータから樹木の位置情報を抽出しなくてはならない。2023年度には全国12か所の固定試験地で試験的に地上LiDARによるデータの取得・解析を行い、ドローンLiDARでは取得しきれなかった林内の詳細な樹木情報の取得に成功した。そのデータセットを用いれば、微地形が森林動態に及ぼす影響や、隣接個体の樹形が当該個体の動態に与える影響など、従来の森林動態に関する研究では検証することが難しかった生態学的な仮説を、さまざまな森林タイプで検証することができるはずである。この発表では、これまでの予備解析の結果の一部と今後の解析方針を示すと共に、手元のデータセットを使ってどのような研究を発展させることが可能かをみなさんと議論したい。