| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W11-5  (Workshop)

長期観測データと衛星写真から作成する日本全国の森林における自然撹乱マップ【O】
Mapping natural disturbance dynamics in forests across Japan combining long-term monitoring data and satellite images【O】

*鈴木紅葉(東京大学)
*Kureha F. SUZUKI(The University of Tokyo)

 人為撹乱(伐採や土地転用)や自然撹乱(風倒や病虫害の発生)を含む森林撹乱は、森林の組成や構造の改変を通じて、森林生態系に影響を及ぼす。近年では、気候変動による世界的な自然撹乱の活発化が明らかになっている。日本各地では、カシノナガキクイムシが運搬する病原菌によるブナ科樹木の集団枯死(ナラ枯れ)や豪雨による斜面崩壊が頻発している。こういった森林撹乱の定量的な把握は、森林の健全性や回復力を高める森林管理を実施していく上で必要である。これまで、時空間的分解能が高く、広範囲で取得される衛星写真を用いて、森林撹乱による森林の変化を捉え、その変化や撹乱体制(撹乱の規模・頻度・強度)のマップ作成を試みる研究が北米・欧米を中心に実施されてきた。しかしながら、優占樹種やバイオームによる撹乱体制の違い、撹乱イベント(風倒・病虫害・山火事など)による撹乱レガシー(岩・枯死木など)の量や質の違いは考慮されてこなかったため、撹乱体制の決定要因は十分に解明されていない。
 本研究では、複数のバイオーム(冷温帯~亜熱帯)を有し、環境傾度の大きい日本列島を対象に、全国の森林における約40年間の自然撹乱をマッピングし、自然撹乱体制とその変化の時空間的な定量化に挑む。自然撹乱マップを効果的に利用するためには、マップ分類の精度を評価する必要がある。そこで発表者は、北海道から沖縄県までの多様なバイオームに位置するJaLTERの森林サイトから得られた、詳細な長期観測データがマップの精度評価に有効であると考えるに至った。この着想は、JaLTERの森林サイトの一つを訪れ、サイト管理者の方々の豊富な知識および撹乱履歴の記録を目の当たりにしたことで得られたものである。毎木データとリモートセンシングという異なる手法の組み合わせによって、長期観測データのさらなる活用が期待される。


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