| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
自由集会 W11-6 (Workshop)
生態系の物質循環やエネルギーの流れは生物間の食う食われる関係、すなわち食物網によって駆動される。よって、気候変動が生態系に与える影響の評価や将来予測を行うために、食物網構造の理解が必要である。同位体分析技術の発達により、食物網内の物質の流れを定量的に評価できるようになったものの、食性が不明な種の場合同位体分析の結果の妥当性を検証できないという問題があり、気候や植生などの環境条件によって陸上食物網の構造がどのように影響を受けるかは調べられていない。
有剣ハチは各種の餌資源が目や科レベルで明らかになっており、食性情報と同位体分析結果の照合が可能である。また、有剣ハチは食性の範囲が広く、異なる栄養段階やデトリタス依存度の種がいることから、群集レベルの平均栄養段階やデトリタス依存度を評価できる。陸上食物網の全生物を同時に調べることは困難だが、様々な食性を含む有剣ハチ群集の環境条件による変化を調べることで、陸上食物網の構造に対する環境条件の影響を解明できる可能性がある。
北海道と九州での研究により、年平均気温の上昇に伴い有剣ハチ群集の平均栄養段階とデトリタス依存度が増加することが明らかになった。一方、これらの値は気温だけでなく、降水量、樹種、土壌環境、地域性などといった条件にも影響を受けていると考えられる。しかし、様々な環境条件の測定を行いつつ広域で調査を行うことは難しい。そのため、環境条件の情報が蓄積されているモニタリングサイトを利用させていただき、有剣ハチ群集と気候や植生などの環境条件との関係について明らかにしたいと考えている。