| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W13-1  (Workshop)

はじめに:モジュラー生物で体細胞変異が受け継がれることの重要性【O】
Heritability of somatic mutations in modular organism【O】

*富本創(九州大学), 巌佐庸(九州大学, 長野大学), 佐竹暁子(九州大学)
*Sou TOMIMOTO(Kyushu Univ.), Yoh IWASA(Kyushu Univ., Nagano Univ.), Akiko SATAKE(Kyushu Univ.)

モジュラー生物 (Modular organism) は、モジュールとよばれる小単位(樹木のシュート、クローナル植物のラメット、サンゴのポリプなど)を繰り返し、個体を構成する。各モジュールは自律的に成長し、個体はモジュールが緩やかにまとまった階層構造をとる。ヒトに代表されるユニタリー生物(Unitary organism)では、眼や脚といった個体の構成要素は個体内で数が定まっているが、モジュラー生物では成長の過程でモジュールの繰り返し数やパターンが自由に変化する。はじめに、こうしたモジュラー生物がもつ生活史の特徴を説明する。
 次に、企画者の研究対象である体細胞変異について、その進化的な重要性に焦点をあて紹介する。モジュラー生物では配偶子形成の際に生じる生殖細胞変異に加えて、個体の成長の過程で生じる体細胞変異も次世代に受け継がれ、進化に寄与する。配偶子形成でのみ生じる生殖細胞変異と異なり、体細胞変異は一度生じると、その後に形成されるモジュールへも受け継がれる。そのため、そのモジュールから以降に形成される全ての配偶子へもその変異が継がれる。結果、体細胞変異として生じた変異はより多く集団の遺伝子プールに供給される。この繰り返しは、遺伝的浮動による消失を乗り越え、変異が集団中へ固定することを促す。体細胞変異は生殖細胞変異よりも集団中に固定しやすく、より強く進化に寄与すると考えられる。この研究では簡単なモデルを用いて、体細胞変異が生殖細胞変異よりも強くモジュラー生物の進化に寄与しうることを数理的に示す。


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