| 要旨トップ | ESJ71 自由集会 一覧 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W13  3月20日 13:00-14:30 Room A

モジュラー生物がもつ多様な生活史:植物、サンゴ、社会性昆虫を通して考える【O】
Diverse life-histories of modular organisms【O】

富本創(九州大学)
Sou TOMIMOTO(Kyushu Univ.)

生物は多様で多彩な生活史をもつ。モジュラー生物は植物や藻類、菌類、刺胞動物など幅広い分類群で見られ、系統樹上で並行してその独特な成長メカニズムを獲得した。彼らはモジュールとよばれる単位(樹木のシュート、クローナル植物のラメット、サンゴのポリプなど)を繰り返し、個体を構成する。各モジュールは自律的に成長し、個体はモジュールが緩やかにまとまった階層構造をとる。モジュラー生物は、ヒトに代表されるユニタリー生物とは異なるさまざま特性をもつ。
例えば、ヒトでは発生初期から生殖細胞と体細胞は系列が別れているため、体細胞変異が次世代に受け継がれることはないが、モジュラー生物では各モジュールから次世代が生じるため、成長の過程で生じた変異が受け継がれる。さらに自然選択がモジュールごとに働くことで、一つの個体内でも進化が起こりうる。他にもモジュラー生物は、数あるモジュールのひとつでも残存すれば個体として生存し続けられるため、ユニタリー生物に比べ非常に長い寿命をもつことが知られている。
モジュラー生物は植物やサンゴなどの生態系を支える重要な種であるのにも関わらず、理論・実証研究ともにユニタリー生物の枠組が適応されている場合が多い。さらにユニタリー生物の昆虫でも、アリのように社会構造としてモジュラー性を持つ種が存在する。モジュラー生物のもつ特性を知ることで、ユニタリー生物の枠組からは見過ごされて来た、生物に遍的な性質も明らかに出来るのではないか。まだ数多くの謎が隠されている。この集会ではモジュラー生物がもつ特性を、多様な分類群の研究を通して考える。

[W13-1]
はじめに:モジュラー生物で体細胞変異が受け継がれることの重要性 *富本創(九州大学), 巌佐庸(九州大学, 長野大学), 佐竹暁子(九州大学)
Heritability of somatic mutations in modular organism *Sou TOMIMOTO(Kyushu Univ.), Yoh IWASA(Kyushu Univ., Nagano Univ.), Akiko SATAKE(Kyushu Univ.)

[W13-2]
群体性サンゴの群体形の可塑性 *向草世香(水研機構・資源研), 酒井一彦(琉球大・熱生研)
Plasticity in the colony shape of corals *Soyoka MUKO(FRA), Kazuhiko SAKAI(University of the Ryukyus)

[W13-3]
樹木のモジュール構造とその成因に関する考察 *隅田明洋(京都府立大学)
The modular structure in trees and some possible factors affecting its formation *Akihiro SUMIDA(Kyoto Prefectural Univ.)

[W13-4]
個体・巣・多巣性コロニー:単為生殖アリの社会における多階層モジュール性 *井戸川直人(都立大・理), 永野惇(龍谷大・農, 慶應義塾大学), 土畑重人(東京大学)
Individuals, nests and polydomous colonies: multilevel modularity in parthenogenetic ant societies *Naoto IDOGAWA(TMU), Atsushi J NAGANO(Ryukoku Univ., Keio Univ.), Shigeto DOBATA(University of Tokyo)

[W13-5]
植物における近親者間競争:ササタケ類の一斉開花枯死の進化を例に *立木佑弥(都立大・理)
Kin-competition in plants: perspective of the evolution of mass flowering in bamboos *Yuuya TACHIKI(TMU)


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