| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W13-2  (Workshop)

群体性サンゴの群体形の可塑性【O】
Plasticity in the colony shape of corals【O】

*向草世香(水研機構・資源研), 酒井一彦(琉球大・熱生研)
*Soyoka MUKO(FRA), Kazuhiko SAKAI(University of the Ryukyus)

 モジュラー生物である造礁サンゴは、モジュール(ポリプ)が石灰質の骨格をつくりなが出芽・分裂を繰り返し成長していく。もし群体の一部のポリプが死亡しても、生き残ったポリプがあらたに成長すれば群体が消失することはない。また群体の一部が欠けおちても、条件さえ整えば、その破片のポリプは成長を続けることができる。サンゴにとって、群体の大きさは年齢と比例しておらず、また寿命という概念を当てはめることは難しい。
 群体の形は種によって概ね決まっているが、光や水流などの環境要因によって変化する。なかでもハマサンゴの一種は種内の群体形変異が大きく、光が弱い環境では横にひろがる盤状、光が強い環境では枝状、その中間の環境では突起ができる複合型が観察される。野外移植実験から群体形は遺伝的に固定されたものではなく、光環境によって誘導される可塑的なものであること、トイモデルの解析から重要なエネルギーである光資源量が群体全体で最も多くなるように、光環境に応じて群体形が変化していることが示唆された。
 また、サンゴの個体群動態を考える上で、群体の部分死亡を無視することはできない。年齢ではなくサイズを考慮し、サイズが縮小するという効果を取り入れたモデリングが必要である。演者らは、幼生着底から生存、部分死亡、成長、幼生生産という個体の生活史を再現する個体ベースモデルを構築した。幼生の分散距離が短いトゲサンゴ(Seriatopora hystrix)に着目し、野外調査から推定した生活史パラメータを用いて、大規模白化後も残る慶良間個体群の存続可能性と、個体群が消滅した沖縄本島での回復可能性を検討した。個体群の維持や回復には、幼生の外部からの十分な幼生供給が必要であり、近隣個体群とのコネクティビティの強さが重要になることが示唆された。


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