| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
自由集会 W14-3 (Workshop)
ネイチャーポジティブ ―自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること― が社会が達成すべき共通の目標として認識されるようになっている。この目標の実現に向けた取組みの方向や到達度を評価するためには、生物多様性の時間変化を精度高く捉える必要がある。2023年度からスタートした環境研究総合推進費「生物多様性の時間変化をとらえるデータ統合と指標開発」では、国内における生物多様性の時間変化の評価・予測を一貫して可能にする枠組みの構築を目指している。そのため、モニタリングサイト1000、河川水辺の国勢調査、森林生態系多様性基礎調査等の各行政機関が実施している観測や、長期生態学研究ネットワーク等の研究者ネットワークにより取得された大規模な生物量の観測情報を活用し、生物量・個体数を中心とした生物多様性指標の時間変化の推計を行うための解析を進めている。そこでは、多様な観測データタイプをどのように統合するか、また、異なる分類群や多層的な空間スケールで一貫して利用可能な指標をどのように定義・出力するかが課題となっている。また、単に評価にとどまらず有効な対策オプションを提示するため、保護区や自然共生サイトなどの保全地域の設置、あるいは森林・河川管理といった保全・管理手法による生物多様性保全効果の実証も課題とされている。これらの課題に解決の道筋をつけることで、例えば、複数の保全・管理シナリオの下での生物多様性変化の予測や、生物個体数をベースとした管理目標の実務への実装といった発展的な成果につながることも期待される。本講演では、研究プロジェクトの進捗を紹介するとともに、JBON実行チームへの参画など、今後のJBONとの連携深化の可能性について議論する。