| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W16-1  (Workshop)

マカロネシアで適応放散したキク科ノゲシ属の系統ゲノミクス【O】
Phylogenomics of the explosive species diversification of the woody Sonchus alliance (Asteraceae) in the Macaronesian Islands【O】

*高山浩司(京都大学), Seon-Hee KIM(Dept. Botany, Kyoto Univ.), 今井亮介(森林総研), Arnoldo SANTOS-GUERRA(Canarian agriculture inst.), Juli CAUJAPé-CASTELLS(Viera y Clavijo Canary BG), 増田幸子(理研), 柴田ありさ(理研), 白須賢(理研), Seung-Chul KIM(Sungkyunkwan Univ.)
*Koji TAKAYAMA(Dept. Botany, Kyoto Univ.), Seon-Hee KIM(Dept. Botany, Kyoto Univ.), Ryosuke IMAI(FFPRI), Arnoldo SANTOS-GUERRA(Canarian agriculture inst.), Juli CAUJAPé-CASTELLS(Viera y Clavijo Canary BG), Sachiko MASUDA(CSRS, Riken), Arisa SHIBATA(CSRS, Riken), Ken SHIRASU(CSRS, Riken), Seung-Chul KIM(Sungkyunkwan Univ.)

 生物進化の実験場とも呼ばれる海洋島には、適応放散によって種分化した固有種が数多く存在する。すなわち海洋島では、多様な形態を持つ種群が様々な環境で生きる姿を観察することができる。一方で、適応放散的種分化はしばしば非常に短いタイムスケールで進行するため、固有種間の系統関係を推定することは難しかった。適応放散した種間の遺伝的差異のうち、系統的シグナルを持ったものは僅かであるため、従来の分子マーカーを使った方法では、適応放散過程の詳細を知ることはできなかった。さらに、適応放散した種間では種分化過程における分集団-種間の遺伝子流動も存在しうるため、これらが系統情報をあいまいにする要因となっているとも考えられる。
 そこで本研究では、葉緑体DNAの全長塩基配列とゲノムワイドな一塩基多型に基づく系統解析を行うことで、カナリア諸島で大規模な適応放散を遂げた広義ノゲシ属の進化過程を明らかにすることを目的とした。また、いくつかの種については、一塩基多型から信頼度の高いデータマトリックスを作出するために、ドラフトゲノムの決定をおこなった。カナリア諸島のノゲシ属の固有種全30種を網羅したサンプルを行い、ゲノムスキミング法による葉緑体DNAの全長塩基配列に基づく系統樹とddRAD-seq法によるゲノムワイドな一塩基多型に基づく核DNAの系統樹を構築した。その結果、これまでの系統解析に比べて、格段に解像度が高い系統樹を得ることに成功した。また、葉緑体DNAと核DNAの系統樹が明らかに一致しない系統群が存在することが示された。葉緑体DNAの祖先多型の影響や適応放散過程での近縁種あるいは遠縁種間での遺伝子流動によって、両系統樹の不一致が生じたと考えられる。本発表では、ゲノム情報に基づく解析の展望についても発表する。


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