| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
自由集会 W16-4 (Workshop)
系統的に異なる分類群における類似した形質の進化 (収斂進化) は、偶然によって生じる可能性が低いため、自然選択による形質進化を調べるための格好の材料である。九州南部に位置する屋久島は、多くの固有種を含む1100種類以上の維管束植物が分布しており、日本列島における植物多様性のホットスポットの一つである。屋久島では、主に高標高域に分布する100分類群以上の草本植物において、九州などの他地域の普通型集団と比べて植物体サイズが著しく小型化していることが知られている。これら矮小植物群の多くは屋久島に固有で、植物体サイズには遺伝的な基盤があることも報告されている。発表者らのこれまでの研究により、矮小化は草食獣であるヤクシカの嗜好性種でのみ起こっており、狭く隔離された屋久島において、高密度で分布するヤクシカからの被食を回避するために40科もの系統群で収斂進化が起きたことが示唆されている。発表者らは、次にこうした矮小化進化をもたらした遺伝的基盤と屋久島における適応進化過程を明らかにすることを目指している。そこで本研究では既に共同研究者によって全ゲノム配列が得られているキク科アキノキリンソウ属の矮小型分類群・イッスンキンカと、新規に発表者らが全ゲノム配列の決定を行ったシソ科トウバナ属の矮小型分類群・コケトウバナを対象に全ゲノム集団解析を行った。両種の屋久島産矮小型集団と近隣地域の普通型集団12個体ずつをリシーケンスし、全ゲノム比較解析によって矮小化に関係があると考えられる遺伝子座の探索を行った。また集団動態解析によって矮小型集団と普通型集団の分岐過程や矮小型集団の有効集団サイズの変動を推定した。本発表ではその結果について報告する。