| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
自由集会 W17-1 (Workshop)
地球上の多くの生物は、地球の自転に合わせた約24時間周期の概日時計を持つ。概日時計機構は多様な種で保存されているが、その概日リズム特性は同一種であっても地域的に多様性が見られることがわかっている。これは概日リズムの変動がその植物の生息域への適応に重要であることを示唆している。概日リズム特性の違いが系統的な要因によるものか、または地理的な要因によるものかを解析するために、本研究ではウキクサ植物の近縁種かつ様々な気候区分に生息する種を用いて概日リズムの比較を行った。
ウキクサ植物は淡水域に生息するサトイモ科の植物であり、熱帯域から亜寒帯域まで世界中に広く分布する。本研究では、ウキクサ植物のうち熱帯域から亜寒帯域まで広く分布するLemna属8種と、熱帯域から温帯域に分布するWolffiella属7種を用いた。異なる温度環境(20・25・30℃)かつ恒明・恒暗環境下で概日リズムを測定することで、種間・属間の概日リズム特性の比較解析を行った。
Lemna属とWolffiella属で比較したところ、Lemna属はほとんどの種で安定した概日リズムが見られたのに対し、Wolffiella属では周期の種間でのばらつきが大きく、概日リズムの持続性の低下を示す種が多く見られた。この結果から、Lemna属とWolffiella属での概日リズム特性の違いは、系統的な要因が示唆された。さらにWolffiella属の中でも、系統的に近い種間では、概日リズム特性の類似性が見られた。また、低緯度地域に生息するWolffiella属や、熱帯域に生息するL. valdivianaはリズムが不安定になりやすい傾向が見られたことから、概日リズム特性の変化には系統的な要因に加えて地理的な要因も考えられた。