| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) J03-02  (Oral presentation)

都市化の影響を受けるスズメバチ2種の餌ニッチの分化と適応
Differentiation and adaptation of foraging niches in two species of hornets influenced by urbanization

*佐賀達矢(神戸大・院・人間発達)
*Tatsuya SAGA(Kobe Univ.)

都市化の影響を受けるスズメバチ2種の餌ニッチの分化と適応 *佐賀達矢(神戸大・院・人間発達)
本州には6種のスズメバチ属の蜂が生息しているが、昆虫生態系の頂点に位置するこれらの蜂がいかに共存しているか、そのメカニズムは非常に興味深い。本研究ではスズメバチ属の中でも同所的に生息し、かつ、生活史も似通っているコガタスズメバチとキイロスズメバチの餌の資源分割に着目して研究を行った。過去の研究によって、コガタスズメバチはキイロスズメバチとの餌をめぐる競争に勝つこと、キイロスズメバチはスズメバチ属の中でも最も広範な餌生物を利用することが報告されている。筆者は餌資源が乏しい都市部では餌をめぐる競争が激化し、キイロスズメバチが餌資源としては価値が低い餌に切り替えているという仮説を立てた。仮説を検証するために、神戸市内の都市部から非都市部にかけて2種のスズメバチの巣を採取し、スズメバチ類の幼虫の腸内容物にDNAメタバーコーディング法を適用し、餌種を特定した。餌種解析の結果、キイロスズメバチの方がコガタスズメバチよりも総餌種数は多かった。また、2種の巣の周囲の500m円内の都市化度が増すにつれて餌種数が有意に少なくなっていた。都市部でも非都市部でもコガタスズメバチとキイロスズメバチの餌種組成は有意に異なり、この点からは餌資源分割による2種の共存が示唆された。餌をめぐる競争が激しいと思われる都市においてはコガタスズメバチの方がキイロスズメバチよりも、非都市での餌種とは有意に異なる餌種を利用していることが明らかとなった。さらに、コガタスズメバチは餌資源としては価値が低いとされる甲虫目や膜翅目などを、キイロスズメバチは餌資源として価値が高いとされる鱗翅目を利用していることも明らかとなり、これらも従来の仮説とは一致しない結果となった。今後は各餌種の量についての検証を進め、上記2種の餌資源分割のメカニズム解明を目指したい。


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