| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) J03-04  (Oral presentation)

巣穴を作らないアリジゴクの行動の比較
Comparison of the behavir of non-pit-making antlion larvae

*奥野泰智(近大学附属豊岡中学), 森豊彦(京大生態研・協力員)
*Daichi OKUNO(Juni high schl Kinki Univ), TOYOHIKO MORI(Kyoto Univ Center of Eco Res)

日本では24種のアリジゴク(ウスバカゲロウ科)が確認されており、その中の20種(83%)は非営巣性です。巣穴を作らないアリジゴク幼虫の行動、生態、生活史などの研究はほとんど行われていません。今回の研究対象は、海浜性のオオウスバカゲロウ、コカスリウスバカゲロウ、山地性のコマダラウスバカゲロウ、ヒメウスバカゲロウです。
研究目的は、巣穴を作らない海浜性の2種の幼虫と山地性の2種の幼虫を、行動学な視点から進化生態学な視点までを調べ、オオウスバカゲロウ、ヒメウスバカゲロウなどの希少種の保全対策のための基礎資料を得ることです。
研究結果では、①幼虫の形態比較、②反転行動の速さ、③捕獲力の持続性、④記憶力、⑤歩き方と速さ、⑥垂直な樹木面の歩行能力、⑦幼虫の生息環境、⑧幼虫行動の進化の系統樹などから新知見が得られました。特に、オオウスバカゲロウは1令から3令まで幼虫の歩く速さ、反転の速さ、捕獲時間の持続性は非常に高く、ヒメウスバカゲロウは1令のみの歩く速さは非常に高く、コマダラウスバカゲロウの1令から3令までは非常に低い結果になりました。コカスリウスバカゲロウの捕獲行動から以前の行動の記憶力があると推測しました。垂直面の歩行能力は、コカスリウスバカゲロウが最も速く歩き、オオウスバカゲロウは歩行することができませんでした。捕獲行動は初期変動型、周期変動型、中期変動型の3型に分けることができました。幼虫の行動の進化を巣穴型、歩行型、捕食型の3型の系統樹を作成して比較しました。


日本生態学会