| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(口頭発表) J03-06  (Oral presentation)

死んだふりしている場合じゃない ―擬死したオスはメスの性フェロモンで目覚める―【B】
No time to feign death.【B】

*日室千尋(沖縄病害虫防技セ, 琉球産経(株), 琉球大学農学部), 宮竹貴久(岡山大学)
*Chihiro HIMURO(Okinawa Pref. Plant Prot. C., Ryukyu Sankei Co., Ltd., Univ. of Ryukyus), Takahisa MIYATAKE(Okayama univ.)

刺激を受けると独特な姿勢で動かなくなる擬死行動「死んだふり」は、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫類など様々な分類群で見られる。擬死行動は捕食回避術として知られているが、餌や交尾を見つけるためのエネルギーや時間を失うという点ではトレードオフの関係にあると考えられる。擬死を誘発する刺激については、いくつかの研究で知られている。しかし、擬死行動からの覚醒については、ほとんど研究されていなかった。性フェロモンは繁殖成功に関係する重要な物質であり、擬死行動の持続時間に影響する可能性がある。そこで本研究では、アリモドキゾウムシ(Cylas formicarius)の擬死行動に対するメスの性フェロモンの影響を調べた。その結果、性フェロモンが存在すると、オスは擬死開始から覚醒するまでの擬死持続時間が有意に短くなったが、メスは影響を受けなかった。今回、メスの性フェロモンはオスの死んだふりを解除する重要な要素であることが世界で初めて明らかとなった。捕食回避か?交尾相手の探索か?動物の生存戦略に新しい視点をもたらす成果である。


日本生態学会