| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-140  (Poster presentation)

幼少期におけるネイチャーゲームを活用した自然体験活動の実践と教育的価値
Practice and Educational Value of Nature Experience Activities Using "Nature Game" in Childhood

*永末透威(本別町歴史民俗資料館)
*Toi NAGASUE(The Historical Mus.of Honbetsu)

 幼少期(本稿では「未就学児〜小学校低学年」を指す)は、感受性や好奇心が最も育つ時期であり、五感を刺激する体験活動の経験が、子どもの成長や学びの基盤形成につながる。遊びながら自然とふれあい、多彩な能力を引き出す手法として「ネイチャーゲーム」が挙げられる。五感で自然を直接体験できることから、幼少期の豊かな感受性の獲得や自然科学への興味関心の向上において重要な役割を果たすだろう。
 ネイチャーゲームは1979年にアメリカのナチュラリスト:ジョセフ・コーネル氏が提唱した環境教育の手法であり、国内では(公社)日本シェアリングネイチャー協会が事業普及を担っている。この手法は自然の面白さや不思議さを発見できる他、自然界の仕組みを感覚的に捉えることが可能である。本別町歴史民俗資料館では2024年度からネイチャーゲームを活用した子ども向けの資料館講座を開催し、遊びながら地域の自然とふれあう機会を提供してきた。
 参加者の発言や行動観察から、自然の音を静かに聴く様子や虫眼鏡を用いて集中して観察する様子、「トゲトゲ、ツルツル」と感覚的に捉える様子、「天狗の団扇みたいな葉」等と何かに例えて表現する様子が見られ、感受性、集中力、創造力、表現力等、総合的な能力を養うことが可能であると再認識した。その他「スズメバチの黄色は目立つ」といった発言や観察物を元の場所に戻すという環境配慮的な行動等も見られた。幼少期に生態学的事象の概念化は難しいが、ネイチャーゲームはこれらを感覚的に捉えることを可能にするため、将来的な学校教育の学びと体験活動の気づきの統合による円滑な概念化が期待される。また、幼少期から「自然って面白い!」と感じる経験を重ねることで、自然を大切にする気持ちが育まれる。その結果、早期の環境意識の芽生えが示唆され、幼少期の発達だけでなく、生態学教育の導入としても教育的価値を有すると考察した。


日本生態学会