| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-141 (Poster presentation)
日本では、生物多様性に配慮した森林管理が求められ、スギ人工林の多様化やスギの成長に適した地理的条件の解明が重要となっている。近年、航空レーザー(ALS)データの高精度化により、森林の空間パターンを詳細に分析する新たな手法が確立されつつある。先行研究では、温暖多雨な気候条件下にある高知県において、南西斜面や地形湿潤指数(TWI)の小さい立地でスギの成長が低下することが報告されている。本研究では、高知県の成熟スギ人工林を対象に、スギ成長低下における地質による斜面方位依存性の違いを探索的に分析した。対象地は高知県香美市内の民有林で、2005~2009年の森林簿で拡大造林期前後に植栽されたスギ・ヒノキ人工林(1949~1978年植栽、2018年時点で41-70年生)、かつ2018年のALSデータでスギと判読されたグリッドとした。2018年のALSデータに基づく樹高(林齢補正後)と地質・斜面方位の関係を一般化加法モデル(GAM)で解析した。その結果、スギの樹高は低標高の北向き斜面で高い傾向を示し、この傾向は地質帯に関わらず共通であった。地質帯ごとの樹高の違いは低標高で顕著であり、秩父帯白亜系(秩父帯上に堆積した白亜紀の海成堆積物)・四万十帯(白亜紀の付加体)で高く、秩父帯(ペルム紀~ジュラ紀の付加体)・三波川帯(白亜紀後期に広域変成を受けた変成岩帯)で低かった。斜面方位に関しては、地質帯ごとの樹高の違いは北斜面で顕著であり、特に四万十帯は北斜面で顕著に高い傾向を示した。一方、南斜面では地質帯に関わらず樹高は低い傾向を示した。ALSの高精度多点データを用いることで、樹高に対する地質の影響は、標高・方位によって異なることを明らかにした。