| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-146  (Poster presentation)

鳴き声識別システムを用いた猛禽類調査への効果検証
Verifying the effectiveness of survey method by automatic classification of raptor calls using convolutional neural networks

*鈴木雅人, 河野郁央, 芳賀大, 彦坂柾成, 赤尾智宏, 田口華麗(国際航業(㈱))
*Masato SUZUKI, Ikuo KAWANO, Masaru HAGA, Masanari HIKOSAKA, Tomohiro AKAO, Karen TAGUCHI(Kokusai Kogyo Co., Ltd.)

希少猛禽類は生態系の上位性を予測するための指標として位置づけられることが多く、自然改変を伴う各種開発事業では、猛禽類への影響を把握するための調査が重要となる。調査では、目視により観察を行う定点調査が広く採用されており、見通しのよい調査地点に調査員を配置し、双眼鏡や望遠鏡等を使って個体の飛翔軌跡や行動等を確認・記録する。これにより、対象種の繁殖兆候や営巣場所を推定することができるが、精度向上には相応のコストや時間を要する。そこで、AI技術(深層学習)の活用により、オオタカ(Accipiter gentilis)の生息・繁殖状況を効率的に把握する技術を大阪大学と共同で開発し、2020年にNETIS(新技術情報提供システム)への登録を行った(「AI技術を用いた鳴き声自動判別システムによる猛禽類(オオタカ)調査技術」)。当該技術は、従来の目視観察とは異なり、調査対象地にICレコーダーを設置して無人で音声を記録し、回収したデータをAI技術(深層学習)でオオタカの鳴き声を自動識別させるものである。
本発表では、これまでに実施したオオタカの識別システムの活用事例から、効果を検証するとともに、他種への展開状況(既報のサシバ以外となるフクロウやクマタカ)について報告する。オオタカに関する効果検証では、当該技術を活用した全国での複数事例のうち、福井県、静岡県、長野県の事例を対象に、分析結果や効果を整理した。いずれの事例も、オオタカの生息有無(在・不在)や繁殖成否について判断することができた。また、特定の鳴き声に着目することで、繁殖の始まりから、産卵、巣立ち、幼鳥の行動拡大に至るまでの繁殖の推移を把握することが可能であり、求愛・造巣期、抱卵期、巣内育雛期、巣外育雛期といった繁殖ステージについても推定できることが示された。


日本生態学会