| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-147  (Poster presentation)

感染症媒介マダニ類とネズミ類の関係 山形県庄内地方での都市と森林での調査【A】
Relationship between infectious disease vector ticks and rodent Survey in urban and forest areas in the Shonai region of Yamagata Prefecture【A】

*石川慎也, 小峰浩隆(山形大学)
*Shinya ISHIKAWA, Hirotaka KOMINE(Yamagata Univ.)

近年、世界各地で野生動物由来の感染症が発生し問題となっている。マダニは様々な病原体の媒介者であり、温帯アジア、ヨーロッパ、北アメリカにおいて大きな問題となっている。またネズミ類は様々な病原体の保有者であり、マダニ類、特に幼若虫にとって重要な宿主である事が言われている。また、都市開発は宿主動物の分布や密度に影響する事によりマダニの種組成にも影響する可能性がある。しかし、それらの関係性は未解明な点が多い。そこで本研究では、都市化に伴うマダニ類及びネズミ類の変化を明らかにする事を目的として、都市と森林のネズミ類の種組成及び寄生しているマダニ類の種組成を検証した。調査は山形県の鶴岡市街及び、山形大学演習林に各4地点を設定し、シャーマントラップを用いてネズミ類の捕獲を行った。調査は2024年7、8、11月に行い、ネズミ類からマダニ類を採取した。その結果、都市環境でアカネズミ(Apodemus speciosus)13匹、ハタネズミ(Microtus montebelli)1匹、ジネズミ(Crocidura sp.)1匹を捕獲し、森林環境でアカネズミ11匹、ヒメネズミ(Apodemus argenteus)1匹、ヒミズ(Urotrichus talopoides)1匹を捕獲した。今回アカネズミからのみマダニが採取され、都市環境では0匹、森林環境では31匹であった。今回採取したマダニ類は全てDermacentor bellulusであった。本種は南方系のマダニである事が知られており、東北地方での本種の幼虫と若虫の寄生の報告は今回が初めてである可能性がある。また、幼虫と若虫が採取された事は、本地域の森林環境において世代交代が行われており、既に定着している可能性を示唆していると考えられる。今後、サンプル数を増やすことでマダニとネズミ、景観との関係性がより詳細に明らかにできると期待される。


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