| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-148  (Poster presentation)

GIS解析を用いた四国内における主要樹種の適地予測
Predicting suitable locations for main tree species in Shikoku using GIS analysis

*鍋嶋絵里, 木村誇(愛媛大学)
*Eri NABESHIMA, Takashi KIMURA(Ehime Univ.)

生物多様性に配慮した森づくりが求められており、放置人工林の広葉樹林化もその一つであるが、条件により天然更新が難しいなど植栽が必要となる場合もある。この場合の植栽においては、遺伝的地域性への配慮に加え、地域の自然に即した適切な樹種の選択が重要である。本研究では、環境条件と分布との対応関係を解析し、予測するための種分布モデルのうち、機械学習法によるMaxentを用いて四国内の主要樹種の適地を予測するモデルを構築することを目的とした。環境条件のデータとして、年降水量、温量指数(WI)、寒さの指数(CI)、傾斜角、傾斜方向、土壌区分、直近の河道からの相対高さの7つを用いた。樹種の分布データとしては、環境省による植生調査データ(以後植生データ)と林野庁による多様性基礎調査データ(以後多様性データ)の2種類を用い、それぞれにおいて四国内で代表的な群落または樹種を解析の対象とした。解析はすべて50mメッシュを単位として行い、得られたモデルの適合度はAUC(Area under curve)値により判断した。
解析の結果、ほとんどのモデルにおいて比較的高いAUC値が得られた。説明要因の貢献度では、高かったものの多くが気象条件(WI、CI、降水量)であり、地形や土壌などの説明要因の貢献度は低い傾向があった。植生データと多様性データとで共通の樹種について予測結果を比較すると、分布可能性のある範囲は大まかに類似しているものの、局所的には逆の予測結果を示す場合も見られた。これらの結果から、今回のモデルでは四国内の気温や降水量の分布に即した樹種の分布を大まかに予測できるものの、局所的なスケールや樹種ごとの地形条件に対応した分布に関する予測は困難と考えられた。自然条件での樹木の分布は、物理環境だけではなく他種との競争関係なども影響しており、今後はそれらの要因も含めて検討する必要がある。


日本生態学会