| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W28-4  (Workshop)

物体認識を用いた動物の行動イベント検出とリアルタイム介入操作の実現【O】
Realization of animal behavior detection and real-time intervention using object detection【O】

*山ノ内勇斗(名古屋大学), 竹内遼介(名古屋大学), 千葉直也(東北大学), 橋本浩一(東北大学), 清水貴史(名古屋大学), 田中良弥(名古屋大学), 上川内あづさ(名古屋大学)
*Hayato M. YAMANOUCHI(Nagoya Univ.), Ryosuke F. TAKEUCHI(Nagoya Univ.), Naoya CHIBA(Tohoku Univ.), Koichi HASHIMOTO(Tohoku Univ.), Takashi SHIMIZU(Nagoya Univ.), Ryoya TANAKA(Nagoya Univ.), AZUSA KAMIKOUCHI(Nagoya Univ.)

動物の行動を正確に定量化することは、行動学の研究において主要な実験手法の一つである。機械学習を用いた動物行動解析の登場は、行動学の研究手法に大きな変革をもたらした。その中でも、機械学習を用いた姿勢推定アプローチによる行動解析は現在の主要な手法の一つであり、動物の身体部位のトラッキングによって動物の行動を推定する。これらの姿勢推定アプローチは多くの行動を効率的に解析することができるが、複数の身体部位が複雑に絡み合う行動や身体の一部が隠れている場合などでは、精度が著しく低下することが課題となっている。この課題は複数個体の行動を同時に観察する、社会的な相互作用(例:攻撃、求愛、養育行動)を検出する際に致命的な問題となる。そこで、この問題の解決のために、本研究では機械学習アルゴリズムの一つである物体検出アルゴリズムを活用し、新しい行動解析ソフトウェア「YORU」を作成した。YORUでは従来の姿勢推定アプローチとは異なり、動物の示す外見や形態を直接分析し、「行動オブジェクト」として行動を検出する。このアプローチでは、複数個体が相互に関与する状況下でも低遅延かつ高精度に行動を検出することが可能である。実際に、脊椎動物から昆虫に至るまで、YORUを用いて複数の種類の社会的行動の解析を行い、高い精度での行動解析が可能であることを検証した。さらに、物体検出アルゴリズムの低遅延であるという特性を活かし、YORUを用いてリアルタイム行動解析および行動への介入操作を実現するシステムを作成した。このシステムとショウジョウバエの光遺伝学とを組み合わせ、求愛行動への神経介入操作を実現した。今回開発したYORUではモデル作成からリアルタイムの介入操作までをGUIに実装し、誰でも簡単にこれらの解析を行うことができる。YORUシステムは社会性行動の研究を躍進させる革新的なツールとなりうると期待される。


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