| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) K01-05  (Oral presentation)

植物間コミュニケーションの代償:ストレス下での抵抗性向上と成長抑制
The Cost of Plant–Plant Communication: Enhanced Resistance and Growth Suppression under Stress Conditions

*村山柊(新潟大学・院・自然), 櫻井裕介(新潟大学・院・自然), 西川孝一(新潟大学・農学部), 塩尻かおり(龍谷大学・農学部), 高林純示(京都大学・生態研), 石崎智美(新潟大学・院・自然)
*Shu MURAYAMA(Niigata Univ., Grad. Sch. Sci.), Yusuke SAKURAI(Niigata Univ., Grad. Sch. Sci.), Kouichi NISHIKAWA(Niigata Univ., Fac. Agric.), Kaori SHIOJIRI(Ryukoku Univ., Fac. Agric.), Junji TAKABAYASHI(Kyoto Univ., CER), Satomi ISHIZAKI(Niigata Univ., Grad. Sch. Sci.)

本研究は、トウモロコシを対象に、損傷した雑草が放出する揮発性有機化合物(VOC)の暴露がもたらす誘導防衛について、その利益とコストが資源制限ストレスなどの環境条件にどのように依存するかを検証した。植物間コミュニケーションは防御誘導として有益と捉えられがちだが、成長-防御トレードオフや誤警報の観点からは、環境により利益が減衰しコストへ転じ得る。そこで圃場および室内で資源制限ストレスを操作し、VOCによる誘導防衛と利益・コストを検証した。まず、トウモロコシ苗を発芽7日目から7日間、VOCに暴露した。VOC源はヨモギとセイタカアワダチソウの混合とし、暴露終了後にストレス処理を開始した。圃場では無ストレス、光制限、乾燥、貧栄養を設定し、摂食被害度と草丈、葉数、SPAD、茎径、分けつ数、雌穂数を測定した。室内では、乾燥×貧栄養×光制限の3因子を全組合せ(8処理)でストレスを与えた。結果として、圃場では摂食被害度に対するVOCの効果が全環境で有意であった。一方で成長・生産形質のVOC効果は環境依存的で、無ストレス下では分けつ数・雌穂数の増加が見られたが、資源制限下では光制限で雌穂数が低下し、貧栄養ではSPAD値や雌穂数など複数形質が低下した。室内では摂食被害に対するVOC効果は全体に検出されにくく無ストレスでのみ低下が確認されたが、成長形質ではVOC暴露により乾燥・貧栄養条件などで草丈、葉数、SPAD、茎径が低下するなどコストが広く現れた。さらに強い光制限を含む条件では、成長が一様に制限され、VOC暴露による差も消失した。すなわち、光資源が強く制限される状況では機能全体が抑制されVOC効果が表現型として現れにくい可能性がある。以上より、トウモロコシにおいてVOC暴露には利益だけでなく、コストも存在することが明らかになった。また、その利益とコストは資源制限の種類や強度によって変化することも新たに示された。


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