| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K01-06 (Oral presentation)
種子が動物の体表に付着することで運ばれる付着種子散布では、ある動物の毛皮への付着量がその種による散布量として扱われてきた。しかし、各動物種の付着種子散布への量的貢献をより正確に評価するには、動物との接触時に付着する種子の量だけでなく、動物と種子が接触する頻度も考慮すべきである。そこで本研究では、従来から散布量の量的評価に用いられてきた接触時の付着種子量に加えて、付着散布植物と動物の接触頻度を記録し、付着種子量と訪問頻度の積から各動物種の種子散布量を推定した。対象としたのは、イノコヅチとミズヒキの種子およびタヌキ、アナグマ、イノシシ、ノウサギ、ニホンジカの5種の哺乳類である。イノコヅチとミズヒキどちらも種子の付着量には、動物種間差が見られた。イノコヅチ種子の平均付着量は、タヌキ、アナグマ、イノシシ、ノウサギ、シカの順に多かった。ミズヒキ種子の平均付着量は、タヌキ、イノシシ、ノウサギ、アナグマ、シカの順に多かった。付着量と接触頻度の積で散布量を求めると、イノコヅチ種子の平均散布量は、ノウサギ、イノシシ、シカ、アナグマ、タヌキの順に多かった。また、ミズヒキの平均散布量は、ノウサギ、イノシシ、タヌキ、シカ、アナグマの順に多かった。したがって、接触頻度を考慮して散布量を求めた場合、付着量だけで評価した場合とは貢献が大きい動物種が異なり、従来の方法では実際の種子散布への貢献が正確に評価できていない可能性が示された。ある動物種のある場所への訪問頻度は、個体数密度や利用環境の選好性によって異なり、結果として種子との接触機会にも差が生じるはずである。接触時の付着種子量だけでなく、種子と散布者の接触頻度も考慮することで、より正確に付着種子散布への貢献を評価することができると考えられる。