| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K01-07 (Oral presentation)
イノシシは植物質に偏った雑食性で、その場にある利用可能な食物を機会依存的に採食する特性を持つ。過去の胃内容分析の結果から、山口県西部においては、秋から冬にかけて堅果類を採食することが明らかになっている。堅果類の中でイノシシが特に嗜好性を示したのがツブラジイ(以下シイ)であり、シイは3年周期で豊作になるため、イノシシに影響を与える。そこで、イノシシとシイの関係を明らかにするため山口県西部と獣害対策モデル地区である下関市朝生地区において、3つの調査を行った。1)県西部全域と朝生地区にシイのシードトラップを設置し、豊凶状況と朝生地区のシイ巻き枯らし効果を調査した。2)カメラトラップを設置し、シイの密度変化に対するイノシシの出現頻度の変化を調査した。3)山口県下関市で捕獲されたイノシシの胃内容を分析し、シイの胃内容占有率がシードトラップにより判明した豊凶周期と連動しているか調査した。
結果は以下の通りであった。1)2024年は県西部が凶作傾向であったのに対し、朝生地区では比較的豊作であった。巻き枯らしエリアにおいては増加傾向であり、予想に反した結果となった。この要因としては、2023年冬の気温の影響から不作になるはずが巻き枯らしの処理方法の不十分さなどからシイの結実を促進させたと考えられる。2)巻き枯らしエリアでイノシシの出現頻度は増加した。この要因として、巻き枯らしエリアでの堅果数の増加が考えられる。3)シイの胃内容占有率が山口県西部のシードトラップの結果と同様の傾向を示した。このことから朝生地区においてもシイの豊凶周期に応じてイノシシの食性が変化することが示唆された。
以上のことから、不十分な巻き枯らし処理は短期的にはツブラジイの生産減少につながらず、かえってイノシシの栄養状態を向上させてしまう可能性があるため、確実に堅果生産を減少させられる伐採が望ましい。