| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K01-08 (Oral presentation)
植物の繁殖形質は、植物の適応度に正の影響を与える送粉者だけでなく、負の影響を与える種子捕食者による選択圧を受ける。両者は同じ繁殖形質に対して拮抗する影響を与える可能性があるため、両方の選択圧を調べることが重要である。種子捕食に対して、自家和合性を持つ植物では多量の種子を生産することで生存種子を確保し、種子食害を希釈する例が知られている。キク科植物では、頭花あたり1匹のみ種子捕食者が存在する例が知られており、大きな頭花を持つことで種子食害を希釈できる可能性がある。
本研究は、北海道の高山帯に分布するウスユキトウヒレン(キク科)を対象とした。本種は自家和合性を持ち、マルハナバチやハエ類によって送粉され、ハエ目の幼虫による種子捕食を受ける。主な分布域である北海道大雪山系の5つの個体群で繁殖特性と受粉成功、種子食害を調べた。
受粉成功は多くの個体群で5割程度だった。種子捕食の頻度は個体群によって異なり、最も少ない個体群で平均21%、最も多い個体群で平均68%の種子が食害を受けた。また、種子捕食昆虫の数はほとんどの場合頭花あたり1匹のみだったが、複数見られることもあった。受粉成功は、多くの個体群で頭花サイズに依存しなかった。多くの個体群で頭花サイズが大きいほど種子捕食者の産卵を受けやすかったが、生存率は高くなり、最終的な種子数も多くなる傾向が見られた。これは、頭花内に多数の種子を持つことで頭花内の種子食害を希釈したと考えられる。種子捕食の頻度が非常に多く頭花内に複数の種子食昆虫が見られた個体群では、頭花サイズが大きいほど種子食害率が高くなり、種子食害は軽減されなかった。種子食害の頻度や頭花あたりの産卵数によって、繁殖形質への選択圧が変化すると考えられる。