| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K01-09 (Oral presentation)
多くの植物で、開花あるいは種子生産といった繁殖量が年変動し、それが集団内の個体間で同調する「豊凶現象」が認められる。こうした「豊凶現象」が進化しうる要因の一つとして、凶作年に捕食者を飢えさせて個体数を抑制し、逆に豊作年に捕食者を飽食させて種子の生存率を高める利点があるといった「捕食者飽食仮説」が有力視され、これまで多くの研究で種子生産量と種子虫害率の関係などが検討されてきた。しかしながら、通常、植物の種子捕食者は昆虫種であっても複数種から構成され、その捕食者相は、植物の開花から結実に至るまで季節的な推移が見られる。したがって、植物の「豊凶現象」と種子捕食者の真の関係を明らかにする上では、植物の繁殖量の年変動に対して,それぞれの種子捕食者がどのように反応しているのか、植物の開花直後・種子発達の初期段階から調べ、検討する必要がある。本研究では、日本の暖温帯林の主要構成種であり、豊凶現象が認められるコジイについて、種子捕食者に繁殖量の年変動がどのように影響を与えているのか、宮崎県綾の発達した常緑広葉樹林において堅果発達初期段階から調べ、検討した。
コジイの初期堅果生産量の7年間の年変動は変動係数1.0と大きな値ではなかったものの、堅果発達初期に合わせて幼虫が果皮を摂食する生活史を持ち、多化性を示す鱗翅目ツヤコガと膜翅目カタビロコバチといったスペシャリスト昆虫に対して、飽食および抑制効果が見られた。一方、成熟サイズの堅果を摂食するシギゾウムシや脊椎動物は、初期堅果生産量が多くなると食害率が高まる傾向が認められた。凶作年ではスペシャリスト昆虫に未熟堅果の大半を食害され、成熟サイズまで発達できる堅果がほとんどなく、成熟サイズの加害が豊作年に限られるためと考えられた。堅果成長初期に激害を与えうるスペシャリスト昆虫の存在がコジイの豊凶現象の進化に関わっている可能性が示唆された。