| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) K01-10  (Oral presentation)

家畜生産に最適な放牧戦略は植生帯により変化するが降水量では変化しない
Optimal grazing strategies for livestock production vary by vegetation zone but not by precipitation

*吉原佑(三重大学), 宮坂隆文(名古屋大学), 甲野耀登(東京大学), 楠井涼(三重大学), 篠田雅人(名古屋大学)
*Yu YOSHIHARA(Mie university), Takafumi MIYASAKA(Nagoya University), Akito KONO(University of Tokyo), Ryo KUSUI(Mie university), Masato SHINODA(Nagoya University)

本研究では、モンゴルの森林ステップ、ステップ、砂漠ステップにおける実証的な植生データと野外で観察された羊の移動パターンを統合したエージェントベースモデル(ABM)を開発した。モデル環境である放牧草地内の植物バイオマスは衛星画像や刈り取り調査地によって推定し、嗜好性と栄養素については、現地の植生調査と文献調査、化学分析によってセルごとに値を求めた。エージェントである羊は、そのモデル環境内を6つの放牧戦略(バイオマス、嗜好性、栄養素に基づく決定論的および確率的アルゴリズム)によって動きながら各セルの草を食べ、エネルギー摂取量が決定されていく。さらに、3つの降水シナリオ(降雨、平年、干ばつ)によって植物バイオマスの成長量を変化させるシミュレーションを行った。
シミュレーション結果から、森林ステップと砂漠ステップでは嗜好性重視、ステップでは植物量重視の戦略で最も羊の摂取エネルギー量が高いと推定された。降水量±20%の変動は、動物のエネルギー摂取量にわずかな影響しか及ぼしていなかった。我々の開発したABMは現実的な空間放牧パターンをうまく再現し、放牧戦略、植生の不均一性、気候変動のダイナミクスに関する知見を提供した。


日本生態学会