| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) K01-11  (Oral presentation)

2タイプの雄しべの機能とその背景
Heteranthery: It's function and ecological context

*横山碧, 井田崇(奈良女子大学)
*Midori YOKOYAMA, Takashi Y IDA(Nara Women's University)

異型雄蕊性は、1つの花に異なるタイプの雄蕊が存在する。あるタイプの雄蕊は報酬として花粉を訪花者に提供し(報酬用雄蕊)、別タイプの雄蕊は授粉に使われる(繁殖用雄蕊)、といった機能を分業しているとの仮説(分業仮説)が提唱されている。
しかし、分業仮説に対するほとんどの研究は、振動受粉機能を持つ種で行われている。これは必然的に特定の種に送粉者が限定されるが、そのような送粉者フィルタリング機能を持たない種において、花の構造とサイズがミスマッチしている非効率的な送粉者の影響は見落とされてきた。本研究では、葯の時間的な裂開パターンと送粉者活性の時間的(ミス)マッチングにより、送粉者を選別することで、分業仮説が効果的に機能するとの仮説をたてた。
この仮説を検証するために、一日花であるサルスベリを使い、送粉効率の高いクマバチと低いミツバチが送粉する状況で、両者の送粉効率について、訪花頻度、体表花粉数、柱頭付着花粉を計数し、花粉流動と花の構造とハチの体サイズの形態的適合性から評価した。さらに、葯の裂開と送粉者活性の日周パターンから時間的マッチングを解析した。
サルスベリでは雄蕊の二型に明瞭な分業がみられた。報酬用花粉は繁殖能力が低く、柱頭に運ばれることも少なかった。送粉は、主に体サイズが花の形態と適合するクマバチが担っており、時間的な葯の裂開パターンはクマバチが活動を始める早朝に適合した。一方、ミツバチの訪花頻度はクマバチより多く、報酬用花粉の持ち出しは看過できない量であった。
本研究は、サルスベリの花粉形質や効果的な送粉者との形態的マッチングは分業仮説を支持したが、それだけでは非効率的な送粉者による報酬花粉の目減りは防げず、潜在的に送粉効率を下げることを示した。加えて、効果的な送粉者との時間的フィルタリングが、非効率な送粉者を排除し、送粉効率を向上させることを示唆している。


日本生態学会