| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) K01-12  (Oral presentation)

植物の匂いコミュニケーション──遺伝か環境か?
Plant Volatiles Communication: Genes or Environment?

*塩尻かおり(龍谷大学), Karban RICHARD(UC Davis), 鍵谷進乃介(龍谷大学)
*Kaori SHIOJIRI(Ryukoku Univ.), Karban RICHARD(UC Davis), Shinnosuke KAGIYA(Ryukoku Univ.)

多くの生物は捕食や食害の危険を知らせる警報シグナルに応答して行動や形態を変化させ,被食リスクを低減することが知られている。動物では,信頼性の高い警報源に対する学習が応答を強化し,防御行動の効率を高める例が報告されている。植物においても同様に,セージブラシは損傷した同種個体から放出される揮発性有機化合物に曝露されると食害抵抗性が誘導され,特に送信側と受信側のケモタイプが一致する場合に防御効果が高まることが示されている。しかし,特定のケモタイプ由来のシグナルに長期間曝露されることが,その後の応答性や抵抗性の増強につながるかどうかは十分に検証されていない。
そこで本研究では,ツジョン型およびカンファー型という異なるケモタイプをもつセージブラシを対象に,揮発性シグナルへの曝露履歴と食害抵抗性との関係を検討した。その結果,全体としてカンファー型個体はツジョン型個体よりも食害程度が低かった。また予想どおり,損傷個体由来の揮発性物質に曝露した枝では,非曝露の対照枝と比べて食害が有意に軽減した。さらに重要な点として,自身のケモタイプが揮発性シグナルの発信源および長期的に隣接していた個体のケモタイプの双方と一致する場合,最も強い抵抗性をもつことが明らかになった。
これらの結果は,植物が周囲の化学的環境に長期的に曝露されることで防御応答が増強される可能性を示しており,特定の揮発性シグナルによるプライミングが植物の誘導抵抗性に重要な役割を果たすことを示唆する。


日本生態学会