| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K01-13 (Oral presentation)
奈良公園のイラクサの刺毛長に及ぼすニホンジカとアカタテハの幼虫の採食の影響を検討した。
方法:シカの採食圧の高い場所とフェンスで囲まれシカの侵入が殆ど無い場所それぞれに大仏殿北調査区と竹林調査区を設定した。2024年3月に大仏殿北調査区内の15個体について4シュートずつ切除して発根させることで得た60個体(4シュート/植物)、及び2022年10月に採取した竹林調査区内の15個体から得た果実を2024年に発芽させることで得た60個体(4実生/植物)を1鉢1個体として定植し栽培した。
2024年6月、大仏殿北個体の、1個体由来の4株及び、竹林個体の1親由来の4実生について、それぞれシカの採食を模した①茎頂切除、アカタテハの幼虫の採食を模した②葉の半数切除と③葉身の半分切除、対照として④無切除を1個体ずつ行った。切除処理と同時に、各個体の上から3節目の葉を1~2枚採取し、葉毎に表面及び裏面の刺毛を任意に5本選び、刺毛長を計測した。同年7月、2回目の葉の採取を行い、同じ方法で刺毛長を計測した。
結果:2回目に計測した両調査区内の葉の両面の刺毛長について茎頂切除は無切除より長かった。茎頂切除と無切除の差は大仏殿北の方が竹林より大きかった。また、竹林の両面と大仏殿北の表面で葉切除(②、③)も無切除より長かった。どの場合も茎頂切除は葉切除より長かった。
この結果は茎頂部の切除は葉の切除に比べて、刺毛長に大きな影響を及ぼすことを示している。
考察:植物は被食を記憶する。大仏殿北のイラクサは、シカによる茎頂部の被食により誘導防御反応によって刺毛長が増大していることが明らかにされている。大仏殿北では新たな被食によって、より大きな誘導防御反応が、竹林ではアカタテハの幼虫による葉のみの被食によって短い刺毛長が現れていることを示唆している。