| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) K01-15  (Oral presentation)

クワズイモ(サトイモ科)果序内の滲出液のmicrobiomeの組成
Microbiome composition of the exudate within the infructescence of Alocasia odora (Araceae)

甲山哲生(東大・農), *高野(竹中)宏平(長野県環保研), 岩崎公典(琉大・熱生研), 森信之介(慶應大・理工), 佐藤柊介(北大・院・理), 硲間太雅(北大・院・理), 武田和也(山梨県富士山研)
Tetsuo I KOHYAMA(UTokyo, Agri.), *Kohei TAKENAKA TAKANO(Nagano Env Cons Res Inst), Hironori IWASAKI(Univ. Ryukyus, TBRC), Shinnosuke MORI(Keio Univ. Sci.&Tech.), Shusuke SATO(Hokkaido Univ. Sci.), Taiga HAZAMA(Hokkaido Univ. Sci.), Kazuya TAKEDA(MFRI)

クワズイモ(Alocasia odora)と、その送粉者であるタロイモショウジョウバエ属2種(Colocasiomyia alocasiae, C. xenalocasiae)は密接な繁殖場所送粉共生関係にある。受粉後の果序内は浸出液で満たされていき、ハエの幼虫はその中で生育するが、幼虫が何を餌としているかは未解明である。本研究では、幼虫の餌資源候補としての微生物群集を明らかにするため、滲出液およびハエ体内の細菌(16S rRNA)と真菌(ITS2)を対象としたアンプリコンシーケンス解析を行った。
開花ステージに伴う微生物相の経時変化を追うとともに、開花前の袋掛け処理によって訪花昆虫のアクセスを阻害した区を設け、微生物組成への影響を評価した。さらに、食性の異なるショウジョウバエ種との比較解析も行った。
細菌群集のα多様度は開花ステージの進行とともに増加したが、袋掛け区では著しく低かった。このことから、訪花昆虫が細菌の運搬と定着を媒介していることが示された。ハエ幼虫の細菌組成は、成虫よりも滲出液の組成に類似しており、幼虫が滲出液中の細菌を摂取している可能性が強く示唆された。
一方、真菌群集のα多様性の分散は細菌とは対照的に袋掛け区で高く、開花とともに変動・やや低下する傾向が見られた。滲出液やハエ成虫からはKodamaea属やMeyerozyma属の酵母が共通して高頻度で検出され、重要な餌資源であると考えられた。また、植物病原菌として知られるFusarium solaniは、訪花昆虫によってクワズイモ花序内に持ち込まれ、時間とともに花序内で増殖することが示唆された。
NMDSを用いた比較解析の結果、ショウジョウバエ体内の微生物組成は食性によって明確に分かれ、クワズイモに特殊化したColocasiomyia属2種は他のショウジョウバエ種とは異なる特異な組成を有していた。本研究の結果は、これまで不明であったクワズイモショウジョウバエ幼虫の餌資源を特定するとともに、微生物を介した昆虫—植物間の複雑な相互作用系の進化に新たな知見をもたらすものである。


日本生態学会